麻里佳の記憶と逃走
教室が光に包まれたときみんなは何事かと言う意味で驚いていたけど、私だけは違う理由で驚いていた。
(唯那のお母さんが言ってた事って本当だったんだ)
これは、今から半年くらい前の事……
「アリアさん、今日はなんで私だけを呼んだんですか?」
私は、唯那のお母さんでどこかの外国の人ということ以外何故か謎に包まれているアリアさんに呼ばれていた。
「フフ、麻里佳ちゃんにはいつも唯那がお世話になっているからお礼をしたかったのとね、大事な話があって呼んだの」
「大事な……話?」
「ええ、まずは簡潔に言うと……今年のどこかのタイミングで麻里佳ちゃんと唯那のクラスで異世界召喚が発生するの」
「……はい?」
「まあそんな反応になるのは当たり前なんだけど、その時に唯那だけは別の場所に召喚されてしまうの」
「……なるほど?」
「それでね……麻里佳ちゃんにはなんとか唯那と合流してあげて欲しいの」
突然の突拍子もない話に反応に困ってしまったけど、アリアさんの素性が全く誰も掴めていない事実と真剣な眼差しに冗談ですよねと笑うこともできなかった。
「今は信じなくてもいい。でも頭の片隅にだけは置いておいてくれると嬉しいの。唯那、いつもあなたの話をしてくれるからあなたまで敵に回ってしまうとどうなるかわからないの」
「それは……私も他のクラスメイトと敵になるってことですか?」
「そうね……最終的にはそういう事になるわ。でも1つだけ言えることがあるの」
「な、なんでしょう」
「あなた達が召喚される人間側はとても闇が深いから、もし唯那が同じ場所に召喚された場合でも人界からは逃げなさい」
「は、はい」
私は、最初から最後まで突拍子もない話だったけれどなぜか忘れてはいけない気がしていたのでメモに残して保管していた。それがまさか……
(アリアさんの言ってた通りだ。ということは、唯那だけ別の所に行くんだ。でもそれってどこなんだろう)
私はそのことが気がかりだったけれどその答えは召喚後すぐにわかることになった。
「皆様、突然で申し訳ありません。私はこの人界を統べる王家の第一王女、アイリスと申します。皆様には勇者として魔王を倒していただきたいのです」
その、人界と敵対しているであろう魔王のもとに唯那はいるんだろうとは思ったけど、ここから逃げなさいと言ったアリアさんの意味はわからなかった。そして、そのままこの世界の説明を聞き夜になった時だった。私は王家の闇を聞いてしまう。
「勇者達の様子はどうです?」
「はい、全員眠っております」
「ふふ、そう。明日からは馬車馬のように働いてもらわなければいけないですからね。まあ嫌がる人がいたとしても明日の夜には洗脳装置にかけるだけですけどね」
「そうですね」
洗脳というワードにびっくりしてしまった私は思わずその場に尻もちをついてしまった。
「…っ、誰かいるのですか!」
「見てまいります」
(ま、まずい)
物音を出してしまったことにより気づかれてしまった私は昼間に適正審査で教わった魔法を急ごしらえで発動させた。
(光学迷彩)
「……どこにも誰もいません」
「そう、ならいいのだけど」
私は、なんとかその場をやり過ごすとそのまま城を抜け出して西の方へと駆け出しました。
(アリアさんの言う通りだ。ここにいちゃダメなんだ)
こうして私の逃走が始まるのです。