みんなで異世界……あれ?私だけ?
光が私達を包み込んで眩んだ視界が元に戻ったとき、そこにあったのは教室ではなく、何かの執務室のような雰囲気を持った部屋だった。そしてなぜか私以外の同じく飛ばされたはずのクラスメイトたちの姿はそこには無かった。代わりにそこにいたのは、小学生くらいの見た目をした少年だった。
「あのー、ここはどこですかね?」
「ん?ここか?ここは魔王城。俺達魔族の総本山さ」
「……ま、魔族?」
「あー、そうか。お前は人間共の奥の手である異世界からの勇者召喚の1人だったか」
「私達に何が起こったのか知ってるんですか?」
「それはそうさ。俺はこの見た目で勘違いされやすいが魔王軍大将、すなわち魔王だからな」
「……なるほど?」
「まあ召喚されたばかりでは何も知らないのも無理はないか。そもそも俺の予想外なのは勇者召喚を妨害するために術式を書き換えはしたが、まさか1人だけ俺の所に召喚されるとはな」
「そうなんですか……」
「そうなんだよ。俺としても少し申し訳ないことをしたと思ってる」
「……なんでですか?」
「俺が思ってたのは召喚された勇者の弱体化系の妨害だからな。そもそも人間が俺の所に召喚されてくるなんて前代未聞だからな」
「確かに……私って魔王様から見たら本来敵ですもんね」
「そういうことだ。まあこっちに来ることになってしまったのは俺の責任だからな。君が望むならば人間側に送ってやることもできるが……」
「魔王様なのに優しいんですね?」
「いや、俺のミスなんだからそのくらいはしてやるだろう?」
「……決めました」
「何をだ?」
「私……魔王軍に加入します」
「………………は?」
「こういう時って以外と魔王様のところにいたほうが環境がいい場合があるので……ダメですか?」
「いや、ダメではないが……いいのか?」
「うーん……なんでかはわからないんだけど、私魔王様が他人じゃない気がして…」
「どういう事だ?まあわかった。ではとりあえず客間に案内するからそこで待っていてくれ」
「はーい」
こうして、私は勇者召喚に巻き込まれたはずなのに魔王軍に加入することになりました。
数時間後、魔王城内魔王私室
「気になってあの人間のステータスを見てみたが……なんだこれは」
俺は、さっきの人間が言っていた他人じゃない気がするという言葉に引っかかりを覚えてステータスをこっそりと確認したのだが、そこに書かれていたステータスは想定の斜め上だった。
名前:五刀 唯那 種族:半人半魔
職業:魔王軍所属
ステータス
物攻 A 物防 A 魔力 SS 魔攻 SS 魔防 SS 敏捷 B 回避 S 運 S
スキル 聖魔耐性 人間特効 物理耐性 魔法耐性 自動回復
称号 異世界転移者 魔王の系譜
「つっこみたいところしかないぞ……?まず、半人半魔で魔王の系譜だと?異世界なはずではないのか…?それにスキルだって完全に対人間用じゃないか。これは……俺必要なんだろうか」
俺は少し気を落としながら明日以降の事を考えるのだった。