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第二話『第六天魔王降臨!』

はっきりしたイメージを思い描くと、魔法陣が浮かび上がる。

そして拘束していた兵士らを魔法陣が吹き飛ばすと光の柱が天に昇り、やがて消えると一人の人物が魔法陣の現れた。


その姿は刀を持った和装の・・・女の子だった。

確かに第六天魔王とイメージしたのだが、こんな女の子だったかな?


「お、女の子・・・?」

「お前か、わしを呼んだのは・・・、変な女神に色々吹き込まれたが、さてどうしたものか。」


彼女はそう言って周囲を見渡す、やれやれといった表情だが腰に下げた刀を抜いて応戦の構えを見せる。


「くそっ、召喚されてしまったか!とにかく召喚士を狙え!」


兵士たちは号令を聞くと召喚された彼女を無視して俺のみに狙いを定めてきた、俺に槍が突き立てられようとしたが先程の助っ人がそれを阻む。


「悪いが今こいつを殺させるわけにはいかんのでな、向かってくるなら相手になるぞ。」

「異界魂が2人、これでは勝ち目がない、一度引くぞ・・・!」


状況不利と察したのか逃げるように彼らは去っていった、ひとまず命の危険は無くなったようで安堵してへたり込む。


「おいお前っ!わしを呼んだのはお前か!?」


俺が召喚した(?)女の子が詰め寄ってきて、胸ぐらをつかんでゆさゆさと揺さぶってくる。


「まったく厄介事に巻き込みよって!安らかにあの世で寝ていたというものを・・・!」

「まぁまぁ落ち着け、この世界に召喚されてしまったのだからもう後の祭りだ。」


なにやら二人が話し合っているが専門用語のような話が飛び交ってよくわからない、とりあえず説得してくれているということでいいのだろうか・・・?


「君には私から説明するわ。」

「あ、あなたは・・・先輩!?」


それはとても見知った人だった、学校の先輩で図書委員を務めている橘香先輩だったのだ。


「見知った顔で私も驚いたわ、君図書室に遊びに来てたトオルくんでしょ?」

「そ、そうです、俺も知り合いに会えてなんだかホッとしました・・・。」


まさか異世界にまできて知り合いがいるとは思わなかった、素直に嬉しいし知ってる人が居たという事実に安心しきってしまう。

俺は情けなくも崩れ落ち、涙を流して喜んだ。


「おいおい、何も泣くことまでないじゃないの。」

「あぁ、すいません・・・いきなり異世界に飛ばされて命を狙われて、結構やばかったものだからつい・・・。」

「まぁ気持ちはわかるよ、君が無事で良かった。」


先輩の差し伸べた手を取り立ち上がる、いきなりのことで頭が追いつかなかったが先輩に出会えて少し落ち着けたと思えた。

周囲を見渡すと森に大草原に青空と、日本じゃまず見ない景色にここが本当に異世界なんだなと実感できる。


そのまま先輩にアジトまで案内すると言われ、案内がてら先輩たちの置かれている状況を説明してもらう。


先輩も女神に言われるがまま召喚されてこの地に来て、俺みたいに知り合いを見つけて合流したはいいものの、その知り合いが召喚した人物が国盗りを行い圧政が敷かれているということだった。

そして先輩たちはそれを止めるべくレジスタンス活動をしているのだとか。圧政により弾圧されて空白になった教会権威を利用して先輩は大司教を名乗り王国打倒に向けて動いている、ということらしい。


「ついた、ここがアジトだよ。」


そこは寂れた教会だったが、かなり要塞化されており石垣に武装した兵士も多数いるのがわかる。

先輩の姿を見ると皆が大司教様といって頭を垂れる、異様な光景に見えたが先輩がそれだけ慕われているということでいいのだろうか。


「ここならゆっくり話ができる、あらためてようこそ、我が城へ。」

「先輩、扱いがすごいんですねぇ・・・あんなに慕われて・・・。」

「なにせ大司教だからね私、さて、何から話そうか。」


俺を助けてくれた、ずっと先輩についている女の子は先輩が召喚した人なのだろうか、不思議そうに見つめていると視線に気づいたのか目が合ってしまう。


「ん?あの子かい?あれは私が召喚した異界魂さ。」

「異界魂?」


そういえばあの敵たちも召喚したらそれを異界魂と言っていた、どうやら召喚士が召喚した魂は異界魂と呼ぶようだ。

俺が召喚した異界魂の少女に目をやると、彼女は壁に腕組をして俺に鋭い視線を向けていた。


「そういえば、君が召喚した彼女、まだ名前を聞いてなかったね。」

「はぁ、彼女は誰なんでしょうかねぇ、第六天魔王ってイメージしたら出てきたのですが・・・。」


「ほーん、第六天魔王じゃと?全くそんなものでわしを呼び出せるとかあの女神は何を考えておるんじゃ。」


彼女はこの調子でずっと悪態ついている、やっぱり第六天魔王だし織田信長なのだろうか?

確かに漫画で読んだ信長は女の子だったが、ひょっとして漫画の人物が呼び起こされて具現化したのだろうか。


「ひょ、ひょっとしてあなたは織田信長でしょうか・・・?」

「織田信長?それだったらすごいことじゃないか、第六天魔王と具体的に想像したら出てくるものなんだね。」


それを聞いた彼女は更にため息を付いて歩いてきたかと思えばげんこつが頭に飛んでくる。


「痴れ者が!わしを名も知らぬ何処ぞの人と間違えるとか無礼にも程があるわ!!」

「ええっ!?じゃあ信長じゃないの??」


「そのノブナガとかいうのには悪いが、わしは知らぬ。」

「じゃああなたは一体・・・?」


「ならば教えてやろう、わしは室町幕府六代目将軍、足利義教じゃ!」

「足利・・・。」


先輩と少女がその名前を聞いて少し反応するも、すぐに戻り笑みを浮かべる。


「あ、あしかがよしのり・・・?」


歴史漫画は読むことはあったが全然知らない人だった、室町幕府って言ったら戦国時代より前だったはず。

足利って言ったら金閣寺とか銀閣寺作った人だっけ・・・?


「はぁ~~~、足利将軍の名も忘れ去られるとは諸行無常よのぉ・・・。」

「え、えっと・・・なんだかごめんなさい。」


「まぁそれは大目に見てやるとしても、な・ん・で!女子の姿で召喚したのじゃ!!こっちのほうが腹が立ってたまらんわ!!」

「えええ!?そ、それは読んだ本で女体化してたからそのイメージで・・・。」

「この煩悩!」


また頭を殴られる、どうやらこの義教さんは気難しい性格のようだ、ポカポカ頭を殴られてなんでこんなのを召喚してしまったのか少し後悔してしまう。


「まぁでも、第六天魔王とイメージして召喚したのなら大体合っていると思うよ、足利義教はその暴君的な政治と、仏閣への攻撃を惜しまなかったから第六天魔王と畏怖された人物だったからね。」

「な、なるほど・・・。」


夢の中で女神が言っていた女神の加護、その正体がこの召喚士としての能力だと先輩は言う。

魂を管理する女神だからこそなし得る技で、異世界の死者の魂すらも現世に呼び出せるこの能力はとてもすごいものだ。

ただし先輩が言うに同じ世界の魂しか引っ張ってこれないということらしい、この世界の魂は召喚できないようで、色々と試したがこの世界の魂は現れなかったようだ。


「それから、おそらく君の召喚した魂がカードとして具現化しているはずだ、それがなくなると大変なことになる、大事に持っておいたほうがいい。」

「カード・・・?」


自分の体をまさぐって見ると、胸ポケットに見知らぬカードが入っていた、裏面には模様があり、正面には彼女、足利義教が描かれていた。

どうやらこれが先輩の言う魂のカードらしい、召喚士が呼んだ魂はこのカードと紐付けされていて破いたりすると消失してしまうようだ。


それなら大事に管理せねばなるまい、俺はそっとカードを胸ポケットに戻す。


「さて、そろそろ私達の目的、王の殺害計画について話しておかなくてはな・・・。」

「さ、殺害・・・!」


先輩の目的は王の抹殺、そして国政をそのまま教団で管理運営していくこと、要は革命だった。

そしてこの国を牛耳る王は異界魂であり、真っ向から挑んでも勝ち目はない、だから仲間を集める時間が必要だったと説明される。


「こうして君が来てくれたのはまさに幸運だったよ。異界魂が二人もいれば勝ち目はある、王を打倒してこの国を平和にしたい、一緒に戦ってくれるか?」

「はい・・・!俺、やります!」


差し出された手を取り握手をする、流れのまま先輩たちのやることに加わることになったがきっと先輩たちが正しい事をしているから疑うことはなかった。

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