プロローグ
毎日学校に通い、毎日友達と馬鹿なことで笑い、毎日家に帰り、そして寝る。
1年365日通して行われる同じことの繰り返し、これがいわゆる日常ってやつだ。
そんな俺、奥村透は普通に勉強できてそこそこ運動もこなせる平々凡々な高校生だ。
趣味も広く浅くかじっているだけで、アニメみたり漫画を読んだりはするが詳しいわけでもない。
そんな感じで没個性で特に目立つわけでもなく、毎日を可もなく不可もなくだらだらと過ごしている。
「何か面白いことでも起きないかなぁ。」
夕ご飯を済ませ、あとは寝るだけの夜、毎日毎日同じことの繰り返しでつい何か起きないかと思ってしまう。
だが現実はそう奇想天外なことは起こしてくれない、このまま俺の人生は山も谷もなく平穏な毎日で終わるんだ。
「はぁ、馬鹿なこと考えてないでさっさと寝るか・・・。」
このままこんな毎日が繰り返されると思っていた、そうこの時までは・・・。
目が覚めると真っ暗闇に漂っていた。
これは目が覚めたのか?いや、きっとまだ夢を見てるんだろう・・・けど、それにしてはやけにはっきり意識がある感覚がする・・・不思議な夢だ。
『目が覚めましたか、神に導かれし魂よ。』
(な、なに・・・!?急に声が・・・!)
周囲を見渡そうと首を振るが何も見えない、声だけが頭の中に響いてくる、そんな感覚。
『急に呼び出してしまい困惑させてしまいましたね、私は魂を管理する女神です。』
(め、女神・・・!?なんだ、俺の頭がおかしくなったのか?それとも夢だから何でもありなのか?)
『この場所はいわゆる精神世界、魂だけが訪れることが出来る場所です。そしてあなたはここに来ることを許された存在なのです。』
(精神世界・・・?一体どういう状況なんだこれ・・・?)
『今起きていることは夢でもありません、実際に起きていることなのです。私があなたの肉体から魂を分離してここに呼び寄せたのですよ。』
魂の分離・・・?もはや言っていることの理解が追いつきそうになかった、だが言っていることが本当なら今意識だけがここにあるということなのか?
(よくわからないから説明してくれよ、どういうことなんだ!?)
『要するにあなたの精神、魂をあなたの世界にある肉体から分離しこちらに連れてきたということです。わかってもらえましたか?』
(ちょ、ちょっとまって!?っていうことは俺死んじゃったの!?)
『いいえ、肉体と魂は切っても切れないもの。私の力で一時的に離れているだけなので、肉体は魂が戻るまでは時が止まったように眠るだけです。』
なら早くこの場所から帰してくれ、そういう前に声が思考を遮る。
『私に選ばれた魂よ、あなたには勇者になれる資質があります。その力で異世界を闇から救ってはもらえませんか?』
(世界を、救う・・・!?)
世界を救えと大真面目に女神の声が言う、特に運動ができるわけでもなく武術だって習ってるわけじゃないこの俺に何が出来るというのだ。
『あなたには異世界で戦うために私の力の一部を分け与えましょう、その力を使い世界を救ってください。』
(ちょ、ちょっと!?話が急すぎてついていけな・・・)
『頼みましたよ、もし世界を救えたならあなたの魂を現世へと必ず戻してあげましょう。』
次の瞬間、まるで落下するような感覚に見舞われ、無重力感が全身を襲う。
こうして僕は理不尽に異世界へと飛ばされてしまったのだった・・・。