雨上がりの空に君の指先を見る
「…くっさ。」
ぼそっとつぶやくと、思いっきり頭をはたかれた。
「あにすんだよ!」
「雨上がりのにおい、好きだなって私が言ったばっかりなのに何でそんなこと言うわけ!」
だからってはたかなくてもいいだろ…とちょっと口を尖らせたら今度は思い切りため息をつかれてしまった。別にいいだろ、匂いなんて。どうでもいいじゃん。かぎたきゃかげば。そう言いたいのをぐっとこらえる。言いたいことちゃんと我慢しているのにどうしてこいつに女心がわかってないとか言われなくちゃいけないんだ。
「ほーんと、女心のわからないやつめ。」
「はぁ…ごめんて。」
「ほんとにそう思ってる?」
下からのぞき込まれて思わずのけぞった。
「篤照れてる~。」
ニヤニヤしながら指を指されてムカついた。
「照れてねーよ、バーカ。」
そう言った自分の声がかすれて妙な感じになったと思った瞬間、顔がカッと熱くなるのを感じた。くるっと明後日の方向を向き、
「遅れるから行くぞ!」
と叫んでそのまま走り出した。
「ちょっと馬鹿!まだ全然遅刻しないって!」
後ろからバタバタと走る音がする。息が上がるのも、顔が熱くなるのも、全部走ってるせい。そう自分に言い聞かせながら、少しぬかるんだ坂道を、俺は全速力で駆け上がった。