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夕陽

 遠くに見える岩木山のシルエットが夕陽の空に向かって凛々しく見える。

 海は何処までも青い。

 津軽線を三厩からの普通列車が通過する。キハ40系気動車が2両という小さな列車だ。

 小岩剣は長野にいる三条神流に電話をしていた。

「三条さん。先日の郡鉄埼玉支部の件ですが、お断りさせてください。」

 三条神流はそれに何とも言わなかった。

「私は、ニセコ姉さんといる日々を取り戻したようです。今後は、ニセコ姉さんと共に、生きていきたく思います。離れている寂しさもありますが、そこは、郡鉄の皆様や関東に居る友人達と過ごして埋めていきたいです。」

「そうか。」

 三条神流は初めて口を開いた。その背後に微かに、列車の音が聞こえた。

「まあ、そう言うだろうと思っていた。お前が本来の姿、お前の姉さんと過ごす日々を取り戻したのなら、連合艦隊に居る必要性は無くなる。そして、俺のように、大切な人の所に行く事になるかもしれない。だが、お前の本心からそうしたいのなら、そうするがいい。そして、本心のままに生き、本心のままに大切な人を愛せ。中途半端な気持ちで裏切ったのなら、あのナイフで喉を切るんだ。」

 小岩剣は困った。例のナイフは刃が折れて使えなくなったのだ。それを伝えようとしたが、

「じゃあ、元気でな。また会おう。」

 と、三条神流は言って電話を切った。

 津軽海峡線の線路を、北海道へ向かう高速コンテナ貨物列車が駆け抜けて行く。

 北から南へ向かう旅客機が、津軽の空に矢のような飛行機雲を描く。同じ飛行機雲を、三条神流も長野の安曇野から見上げていた。

「俺のココロノツバサは、姉ちゃんと一緒に居る時間を永遠に与えてくれた。お前のココロノツバサは、お前に何を与えた。」

 と、三条神流は空に向かって言った。

「カンナ。始まるよ!」

 南条美穂に呼ばれ、三条神流は89式自動小銃を持ち、まもなく夜の闇に包まれるフィールドに向かう。

「なあ姉ちゃん。」

「何?」

「好きだ。」

「私も、カンナのこと好きだよ。」

 南条美穂と三条神流の2人が、30人の敵を相手にするキツネ狩り戦を繰り広げている中、小岩剣は三条神流から貰ったナイフの柄を海に放り投げた。

「三条さん。私に自決用ナイフは必要ないようです。そして、三条さんにも必要ないようです。本当にその人を愛し、大切にしているから、三条さんも私も、会いに行くのです。ココロノツバサを広げ、鉄路の彼方まで。」

「ピイーッ」と、何処からか汽笛が聴こえた。


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