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故郷の列車

(ニセコ姉さんとこうして居るのっていつ以来かな?)

 と、小岩は思う。

 澄み渡る冬の青空の下、ニセコと車で駆け抜ける。

「夏休みは海に飛び込んで、冬は雪合戦。」

 ニセコが思い出話をする。が、そのほとんどに覚えがあった。

 小岩は、何かを聞き、何かを見る度に、消えていた物が蘇って行くのを実感した。

 蟹田から松浦街道を走り、街道沿いのドライブインで昼食を食べ、ニセコの自宅へ行く。

 津軽線の線路を貨物列車が追い越して行った。

 出会う列車は特急列車か貨物列車ばかりだ。

「青函トンネルへのアプローチ。でも、北海道新幹線が出来たら普通列車だけがトコトコ走るただのローカル線に逆戻りね。」

「そうだね。新幹線が出来てしまえば、この線路はただのローカル線。切り捨てられて廃止されちゃうかもね。」

 小岩は遠くを見ながら言った。

「まさか、貨物列車まで持ってかれるかもしれないなんてね。貨物列車をまるごと新幹線に載せちゃうなんて。」

「国鉄の頃にそんな突拍子も無い計画があったな。経費かかる、設備が必要って頓挫したが。」

「私と一緒に、貨物列車の貨車や、コンテナの数を数えたのも、思い出になっちゃうのかな。」

 ニセコは溜め息をついた。

 ニセコの自宅に着く。

「家の隣、今は空き地になっちゃったけど―。」

「ここに家があったんだよね。」

 と、小岩は言う。松江ニセコの自宅は小岩剣の旧宅の隣りだったのだ。

「そう。」

 ニセコの自宅に入る。

 玄関には、C62蒸気機関車の鉄道模型が飾ってあった。

 リビングには、キハ183系特急「北斗」の鉄道模型が飾ってあった。いかにも鉄道員の住む家と言う雰囲気だ。

「へえ。ED79の前で撮った写真、まだ飾ってあるんだ。」

 と、小岩が戸棚に飾ってあった写真を手に取る。小岩剣とニセコが二人で寝台特急「北斗星」のヘットマークを付けたED79電気機関車の前に立ってる写真だ。

 松江ニセコは驚いた。

「覚えているの?」

「えっ?いや―。」

「そういえば、今朝からめっちゃ笑ってる。まるで、昔のつるぎに戻ってるみたい。」

 小岩はこのとき気付いた。

「あけぼの」の車内で見た物が、小岩の記憶そのものだったということに。


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