日の出
「ピーッ!」
と、汽笛が鳴り小岩は目が覚めた。
寝台特急「あけぼの」は雪煙を上げながら走行しているようだが、さっきまでの記憶をたどる。
(夢だったのか。)
と、小岩は寝台から降りて周囲を見回す。乗客数は上野を発車した時とほぼ変わりはなかった。
4号車から、3号車、2号車を見に行くがそこも上野を発車した時と変わりはなく、幼少期の頃の姿の小岩と両親、小学4年の頃の小岩、中学生の時の松江ニセコの姿は無かった。だが、床に高崎駅で三条神流がくれたコンバットナイフの柄が落ちていた。刃の部分は完全に折れて、どこかに行ってしまったらしい。
不意に窓の外から陽射しが差し込む。
日の出だ。
寝台特急「あけぼの」は夜の闇の中から朝の陽射しが差し込む世界を一路、青森を目指して走り出したのだ。
「ニセコ姉さん。」
陽射しの差し込む車内に、松江ニセコの姿を見たような気がしたが気のせいだった。
列車は秋田駅に滑り込む。
秋田駅で朝食を購入し、B寝台に戻る。
秋田駅からは行商人が多く乗ってくる。秋田駅の一つ前の停車駅である羽後本荘駅から青森までは立ち席特急券で利用出来るため、この列車は秋田から青森までは行商人の輸送の役割も担っているのだ。
秋田駅を発車し、列車は雪景色の中をひた走る。
時折、EF81の汽笛が聞こえる。
八郎潟、森岳と止まり列車の乗客が数人乗り降りする。
東能代駅で五能線の気動車と出会い、また別れ、鷹巣で秋田内陸循環鉄道と出会って別れ、大館で花輪線と出会って別れる。
秋田県との県境を超えるトンネルに入り、青森県に入った。
大鰐温泉で行商人が降り、弘前でも十人近い旅客が下車する。
「ピイーッ!」
と、汽笛が鳴り響く。
車窓には津軽富士として親しまれる岩木山が凛とした姿を見せていた。
やがて、車内放送が流れ列車は終点青森駅に着くと告げられた。
寝台特急「あけぼの」は、青森駅にゆっくりと青い車体に朝陽を反射させながら入線する。
ドアが開き、小岩剣は多くの乗客と共にホームに降り立った。
「おかえり。つるぎ。」
と、松江ニセコが言った。
「ただいま。ニセコ姉さん。」
小岩剣はニセコに向かって歩き、ニセコは小岩を抱いた。
「元気にしてた?姉さん?」
ニセコは(アレ?)と思ったが、
「元気にしてたよ。」
と、笑って言った。




