表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/46

帰港

 修学旅行からしばらくして、小岩剣の両親が揃って帰ってくると連絡があった。

 小岩剣の父は土曜日に、ソマリア沖から横須賀へ帰ってくるので、横須賀に行く。しばらくして、海上自衛隊横須賀基地に護衛艦「てるづき」が入港する。

 入港してから2時間ぐらい待っただろうか。

「つるぎ」と呼ばれる。

「父さん。お帰り。」

「横須賀基地まで来てくれるとはな。」

 驚いた顔で父は言った。

 横須賀線に乗って自宅へ向かう。

「正月明けまでは地上勤務だ。その後はどうなるか―。」

 と、父はいうが、これまでにも父は災害派遣やPKO活動で予定より早く出港することが多々あった。

「そうか。」

「すまないな。」

「何が?」

「母さんも父さんも、海外勤務ばかりで、つるぎには辛いことも。小学生の頃のことも。」

「あの頃はそうだった。父さんのこと怨んだこともある。でも今は違う。周りの人達が支えてくれる。父さんと母さんはもちろん、姉さんも居る。」

「姉さんって、あのニセコちゃんか。」

 父が言う事に小岩は少し驚いた。

「父さん、知ってるのか?」

「知ってるも何も、青森で暮らしてたときの仲良しさんで、小学4年の冬休みまでは、一人で会い行ったりしてただろ?」

 小岩は無理に笑っていた。

 だが、それは今までのものとは違っていた。

 小岩は両親に、記憶が消えている話はしていない。無理に笑顔を取り繕っていたが、今回はそれも苦労しなかった。

(そうか。ってことは、ニセコさんと俺は小学生まで会っていたんだな。)

 と、思い直すだけだった。

 月曜日には母親が帰って来た。

 海外勤務の母と自衛官の父と小岩剣が3人揃うことは半年に1度あるかないかだ。

 未だソマリア沖では海賊が出て商船が襲われる事がある。先日は米海軍の駆逐艦が海賊の艦艇と戦闘状態に陥り米軍側では死人が出たらしい。

 日本の近海も、中国の海洋侵出でピリピリしている。小岩の祖父も、漁船が中国海軍の潜水艦に衝突されて死んだのだ。

 母も、海外へ行き日本との安全な外交に貢献している。

 しかし、日本の外では何が起きるか分らないし、日本国内でも何が起きるか分からない。平和国家を謳っているがそれとは名ばかりに、日本も安全と言えなくなってきているのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ