ホテルへ
バスと地下鉄で、三奈美達との合流地点へ向かう。
「今度、青森へ帰る時に会おう。私が帰るのは冬休みか2月の連休かな。」
と、ニセコが言う。
「また青森に帰る事があったら、お会いしたいです。」
「あのねえ。お会いしたいですじゃないの。どうして弟が姉に向かってそんなお会いしたいですって堅いこと言うのよ。」
「そうでしたね。」
「まずは言葉から直していこう。記憶が無いなら、また新しい記憶を作っていこう。折角再会した私達だから。」
地下鉄を降りて出口に向かうと、三奈美達が待っていた。
「明日は仕事なんだけど、また会えるかもね。」
「そうで―。そうだね。」
小岩は言い直した。
「ココロノツバサ。忘れないでよ。」
「うん。また会おう。姉さん。」
ニセコはニコリと笑って小岩を抱いた。
「いつの間にかこんなに大きくなって。」
小岩が三奈美達の方へ歩き出し合流すると、
「じゃあね。」
と、ニセコは言った。それに小岩は振り返って応えた。
「どうだった久しぶりの彼女は?」
と清美がからかう。
「彼女じゃない。姉さんだよ。」
小岩は言う。
ホテルに戻り、三奈美から京都タワーの報告を受ける。
「激動の一年だ。」
と、小岩はつぶやく。
「ニセコさんとは何の話したんだ?」
「ココロノツバサ。それから、俺とニセコさんの名前の由来と過去の関係について。」
「ココロノツバサ?」
「三奈美は知らなくていい。」
「どうしてさ?」
小岩は黙り込んだ。
ニセコから連絡が来たのだ。
(お父さんに、会った事を伝えたら、お父さんもまた会いに来て欲しいって言っていた。だから、冬休みか2月の連休、青森で会おうね。)
というものだった。
「なんとなくだが、あの人が姉さんだった気がしてきた。」
小岩が言い、三奈美は「そうか」と言った。
「抱かれた時に俺と同じ物を感じた。」
それにも三奈美は「そうか」と言ったが、清美や事情を知らない男子が騒ぎ出し、気分が悪いのでロビーに降り、ロビーの隣りの小広間に入る。ここはフリースペースだが、小岩以外誰もいなかった。




