修学旅行へ
9月の3連休。小岩達は修学旅行に出かける。
東京駅から東海道新幹線「のぞみ313号」に乗る。この日、車両故障の影響で、700系の代走として先日東海道新幹線から姿を消した500系が16両フル編成でやって来たのだから、小岩と三奈美は驚いた。
世界ではじめて時速300キロで運転を開始した500系は、TGV等海外の高速列車の礎である。
スペースシャトルの機内のような車内に入り、列車の発車を待つ。
列車は東京駅を出て、品川、新横浜と止まった後、最高速度を目指して高速運転する。
「700系と比べてどうだ?」
「静かだね。揺れもそれほど気になるほどじゃないし。」
「そうだな。」
「俺、帰りうるせえって言うぜ。うん。ぜってー言う。」
と、三奈美と小岩は話す。
車内の前の方では、清美と下山我孫子が隣り合って座り何か話している。
「梅小路運転区の滞在時間は1時間だからな。何撮るか決めたんだろな?」
「C62かな。火入って今動かしてるらしいし。」
と、小岩が言うと、
「またシロクニ?」
と、広瀬に言われる。
「まあね。シロクニって言うと、東海道線より函館本線で急行「ニセコ」を引っ張っているイメージが強いが―。」
「ニセコ姉ちゃん?」
「えっ?」
「気付かないの?あの落書き。」
「あっ。」
小岩は思い出した。落書きと手紙の主と同じ名前だということに。
「ただの偶然だろ。」
三奈美は言う。
東海道新幹線「のぞみ313号」は東海道を駆け抜け、名古屋に止まる。
名古屋を出ると、関ヶ原を越え米原を通過。
米原には、500系を作るための試験車両、Win350系試験車両が保存されている。
逢坂山トンネルを抜けると京都に止まるが、小岩達は新大阪まで行き奈良へ行くのだ。
新大阪駅からクラスごとにバスに乗る。
「オレンジのラインと走る犬のエンブレム。帝産観光バスの三菱エアロクイーンだ。」
と、清美が言った。
「へえ。バスにも興味あるんか。」
三奈美が言う。
「将来の夢は、サッカー選手かバス運転手だからさ。」
「極端だな。」
「18になったらすぐにMT車の免許取って、バス運転手になれるように頑張らんと。」
と、清美が言うのに下山我孫子が笑っている。が、小岩剣は「帝産観光バス」という社名に反応した。
(あの手紙の主が働いている会社だ。)




