長野へ
夏休みも後半になる。
小岩剣はこの日、新宿バスターミナルからアルピコ交通の高速バスで長野へ向かう。
脇には広瀬まりももいた。
「これで満足か?」
と、小岩は言う。
「明日からは三条さんも一緒でしょ?」
「そうだが、1日前に長野入りして小旅行でも楽しめるだろ?」
だが、広瀬は寂しそうな顔をしていた。
松本バスターミナルに着き、手始めにアルピコ交通のタウンスニーカーで松本城に行ったり、旧開智学校に行ったりしたがそれでも明るい顔にはならない。
昼食に信州そばを食べていると、三条神流から連絡が入る。
「三条さんから?どうせ電車でしょ?なんで私と―。」
小岩は広瀬に携帯を渡す。
「確かに列車だが、妙だ。」
添付されている写真を見た広瀬も妙に思った。
「ここは、スクラップヤード?長野総合車両センターにしては変ね。」
「明日は朝8時に一日市場駅に来いってさ。」
「また地上空母に乗るの?」
「まあな。」
「小岩君、三条さんと一緒に行動し初めてから、明るくなった気がする。というか、昔の小岩君に戻ってきてるような気がする。」
「悪夢に魘されては、欝になっていた。悪夢に出てくるのは小学6年の担任で、監禁されて暴行されている夢だ。だが、この前見たとき、お前と下山もいた。それで、目の前で殺されたんだ。」
「誰が誰に?」
「担任が、群馬帝国国有鉄道のメンバーの誰かに。悪魔の第4艦隊と言っていた。」
広瀬は「ふーん」と鼻を鳴らした。
この日、二人は松本の街を散策しゲストハウスに宿泊する。
翌日、大糸線で指定された集合場所である一日市場駅に行く。
一日市場駅に着くと、三条神流の地上空母「エメラルダス」の他に大型の軍用車がいた。
軍用車の正体は、三条神流の姉という南条美穂の地上空母「アンドロメダ」だった。
目的地までは小岩と広瀬は別々の車両に乗る。
広瀬は、南条美穂の車両に乗った。
「あの子、小岩君が記憶喪失の鉄道マニア?」
と、南条美穂が聞く。
「ええ。」
「それも、爆弾抱えているってね。まあ、その爆弾もここで落として行ってもらうわ。」
「どうやって?」
「着いたわ。」
到着したのは、昨日、三条神流がメールで送ってきた写真の場所であった。




