再び群馬
夏休みになった。
だが、小岩の予定にブルートレイン乗車というものはなく、群馬に行くという予定がほとんどを占めていた。
「それは散々だったな。」
と、霧降が言う。小岩は広瀬とのいざこざを話していたのだ。
「俺はあいつらとは絡めません。例え昔世話になっていても、もう嫌です。」
小岩は吐き捨てた。
「まったくだ。例え世話になっていても、そんな奴の相手はするな。」
と言ったのは第5艦隊指揮官の三河日引。三条神流の手下で両親の離婚等から一人、新潟から群馬に引っ越してきた新入りだった。
「だが、八つ当たりで物ぶっ壊して手にアザ作ったらなあ。」
三条神流は笑いもしないで言う。
「骨折ったら笑い話にもならねえよ。」
「そうですね。気を付けます。」
この日の目的であるDD51重連が12系客車を牽引する臨時列車が撮影ポイントである上越線の利根川鉄橋を通過する。
「明日はSL重連だ。」
と、三条神流は言う。小岩も数日程、群馬のゲストハウスに宿泊して列車を撮影する。
翌日も、撮影に出掛けD51蒸気機関車とC58蒸気機関車の重連運転を撮影。
その次の日も同じくSL重連を撮影。
この3日間、小岩は群馬の鉄道を追い求めた。
しかし、翌日は特にイベントは無く、群馬でだらだらする。
「8月、長野に行くんだが付き合うか?」
と、三条神流が言う。
「松本に姉貴が居るんだが、会いに行く予定なんだ。もしよかったら一緒に行かねえか。時間を縫って大糸線の撮影とか、アルピコ交通のバスの車庫とか行くし。」
この誘いも、小岩は受けた。
「なら、日程が決まったら連絡する。えっと、お前は明日まで群馬にいるんだよな?」
「ええ。」
「明日は両毛線でDD51と旧客だ。そいつを撮ったら桶川まで送ってくよ。」
と、三条神流は言った。翌日は、両毛線の伊勢崎―駒形間の撮影ポイントで目標の列車を撮影すると、そのまま、国道17号バイパスを通り桶川まで帰る。
桶川に帰ると、広瀬まりもが待っていた。
「なんだ?」
「今度はどこに行くの?」
「長野。お前も来るか?」
「私とは行かないの?」
「お前も一緒に長野に―。」
「三条さんとでしょ?私と二人では行かないの?」




