第4艦隊
その週の日曜日、小岩は一人で群馬帝国帝都防衛連合艦隊を訪ねる。
正式名称は群馬帝国国有鉄道だが、連合艦隊のほうが定着している。
高崎駅で連合艦隊と合流する。そこには、第4艦隊の姿もあった。
「霧降さん。お願いがあります。」
「なんだ?」
「自分を第4艦隊の正式メンバーに加えていただけないでしょうか?」
霧降は驚いた。
「第4艦隊は悪魔の部隊だ。目的のためならば手段を選ばない。」
「私は自分の記憶を探して鉄道を追っています。しかし、今までのやり方では思い出すどころか逆に遠くへ行ってしまっている気がするのです。そこで、以前、一緒に行動した三条さんの居る第4艦隊と共に行動し別の手法で自分の記憶を探したいのです。手段を選ばない部隊なら、どんな手段でも身につけることができるでしょう。」
黙っていた三条神流が、
「記憶喪失になった経緯は三奈美から聞いている。が、連合艦隊の中で最も恐れられる我が第4艦隊はくせ者だぞ。精鋭揃いの第1艦隊より確かに行動力はあるが、手段を選ばないというのは時に恐ろしい事に直面する事もある。」
「それでも貴方は、今日まで生き抜いてきたのでしょう。ならば自分にも、かつての嫌な記憶を消し去り思い出したい記憶を思い出す道を教えてください。三奈美は、あてになりません。」
三条神流は笑った。
「なら、サバゲーで戦って貰わなければだが、まあそれは今日じゃなくてもいい。今日はSLの重連運転だからな。8月に第4艦隊は長野に行く。その時、一緒に来い。そこで受けてもらおう。」
この日は上越線で蒸気機関車D51‐498とC57‐180の重連運転が行われる日だ。
三条神流と小岩は地上空母「エメラルダス」で先日、SLを撮影した撮影ポイントへ向かって撮影をすると、更に列車を追って水上へ向かう。
この間、三条神流は自動運転機能を使っていて地上空母を運転せずに、VRゴーグルとジョイスティックでラジコン飛行機の操縦を行っていた。
次の撮影地で再度列車を撮影した後、三条神流はVRを外す。
「俺は空撮している時が一番好きだ。VRでラジコン飛行機の景色を見て、着陸して現実に戻る。そして現実からVRを使用してラジコン飛行機の景色へと行く。これだけで、地上の嫌なことが消えていくような気がする。」
と、三条神流は言った。




