信越ディスディネーションキャンペーン
2010年の群馬県、及び長野県のしなの鉄道沿線地域から新潟県の飯山線、信越本線沿線地域にかけて、JR、しなの鉄道、沿線自治体が一体となった観光キャンペーンが行われる。
これに伴い、群馬帝国国有鉄道は大規模活動を展開している。
当然、三奈美つばさも出撃していると思われたが、彼は長野県の方へ行っているという情報を第4艦隊指揮官の三条神流から小岩の元に伝えられていた。
かの小岩も、群馬への出撃回数は少なく、バイト代はかつての仲良しだったと思われる広瀬まりも、下山我孫子との交際費に費やしていた。
ゴールデンウイークも、群馬ではDD51が12系客車を牽引するイベント列車が走る。ようやく小岩剣はこれに乗る事が出来た。広瀬まりもも一緒だ。
高崎から両毛線を通り、小山まで行くという。
当日、高崎線で高崎に向かい、目的の列車に乗る。
「久しぶりだね。私と遊ぶのは。」
と、広瀬は笑う。
「そうなのかな。思い出せない。」
DD51が汽笛を鳴らし、列車は発車した。
「三奈美君は長野だって。へえ。三奈美君、彼女いるんだ。」
などと、広瀬は言うが、小岩は景色を見ている。
広瀬は小岩と話そうとしているが、どうも小岩は乗って来ない。
列車が伊勢崎市に差し掛かった時だった。
広瀬は小岩の顔を自分の手で自分の方へ向けた。
「そうやって一人で考えていても、一人で旅をしていても、何も思い出せないよ。逆に、思い出せなくなるだけよ。」
「―。」
「人が怖いなら、私と付き合ってみて。」
「―。」
列車は伊勢崎を出て、次の停車駅である桐生へ向かう。
停車する駅では、地域の名産品のPRが行われていた。
しかし、蒸気機関車と違いディーゼル機関車が牽引する列車は人気がないらしく、ガラガラだった。
何度か、小岩は広瀬を見るが、小岩の方から何か話す事ができない。
「大都市近郊区間のみを利用する場合の特例で大回り。昔やったっけ。」
と、広瀬は小岩の隣に座って言う。
「俯かないの。くすぐったら笑うっしょ?」
広瀬は小岩の脇腹をくすぐってみた。
小岩の顔が赤くなっている。
「昔はこうやって、寂しくならないようにしていたのよ。」
広瀬が笑って言った。




