始まりは終着駅
1999年東北本線。
未明の鉄路を、EF81に牽引される寝台列車が一路、上野を目指して駆け抜ける。
B寝台車の子供は寝ている。
「ピーッ!」
と、EF81が汽笛を鳴らす。その前面には青地に翼を広げる鶴が描かれ、「はくつる」と書かれたヘッドマークが付いている。
夜が明ける。
周囲が明るく照らされる内、その列車の正体が解ってくる。
赤いEF81電気機関車が青い24系客車を牽引する長い列車だ。
列車名は寝台特急「はくつる」。
青森を21時06分に出た寝台特急「はくつる」は、午前5時過ぎに宇都宮を発車。まもなく大宮である。
大宮には午前6時13分に到着した。
B寝台で寝ていた4歳の子供も、両親に起こされる。次はこの列車の終点、上野だ。
「ゴゴンゴン」と荒川鉄橋を渡るといよいよ東京都だ。
ハイケンスのセレナーデが流れ、車内放送が流れる。
「まもなく終点上野。終点上野です。到着ホームは15番線です。」
寝台特急「はくつる」は上野駅15番線にゆっくりと入線する。
列車が止まり、ドアが開いた。
「うえのぉーっうえのぉーっうえのぉーっ。」
と、構内放送が告げる。
母親に手を握られながら、ホームを歩く4歳の子供の目に、車止めが写った。
それは、遥か彼方の生まれ故郷。青森からのレールの終わりでありまた、遥か彼方の青森まで行くレールの始まりだった。
そして、4歳の子供はこの上野駅から、遥か彼方の青森を思いまた、青森から遥か彼方の地である関東で翻弄されながら生きる人生を歩み始めることになった。そう。上野駅は4歳の子供の故郷からの旅の終着駅であり、新しい人生の始発駅となったのだ。