第六項/輝く夜、外の記憶
どうも睡蓮です。
どうして俺は紫さんと会った日ごとに災難な事が起こるのでしょうか。
もうちょっとどうにかならない物ですかね……
紫さんがティンホイッスルに魔法をかけたその日の夜、俺は外の世界にいた数日前の夜のことを夢に見た。
それはMMOでパーティーを組んでいる――組んでいた人と一緒に電脳世界を駆け回っている夢だった。
なぜそのことを見たのかは分からないが、もともと俺には友達が少なかったから必然とネッ友との事を見たのだろう。
…………泣いてないからな。
まあともあれ、今となっては懐かしい、そんな夢だった。
その日も、いつもの通り俺はネトゲをしていた。
「はぁ……今日も仕事疲れた……まぢむりネトゲしよ……」
なんて馬鹿なことを言うと、いつも決まって――
「あんたに疲れてない日があるの?」
「うっ……なんか昨日も一昨日もそんなこと言ってた気がする……」
このような返答が帰ってくる。もはや日課となったこの会話。この会話をしているのが、唯一のパーティーメンバー、Teruyo2110さんだ。
因みに女性。俺が生きてきたうちで初めての女性の友達である。
――べっ別に友達がまったくいない訳ではないんだからね!?少しはいたんだからね?ホントダヨ?
……確かにいたはいたけど、進学するごとに見切りつけられてたからなぁ……
ゲフンゲフン、そんなことはどうでもいい、とりあえずはじめての女性の友達なのだ。女性の。
「でも、ほんとに私の提示するあの条件をクリアしてくる人がいるとは思っていなかったわ」
「いやーほんと……自分でもよくあの条件クリアできたと思う」
このTeruyoさん、実はそのMMOの中ではなかなか人気のプレイヤーだったのだ。
レベルが高い上位陣でも5人で勝てるレベルのモンスターを初期装備で、しかもひとりで倒したり、無尽蔵に出てくるレアポーションの数々等、このゲームでは彼女のことを知らない人はいない。
しかしそのゲームでの目撃時間が、24時間いつでもあるのだ……
そのことから、いつしか人はこう呼んでいた。
――ニートのハイスペッカー、と。
まあそのニートさんなわけだが、なぜ人気なのにずっとソロだったのかというと……
パーティーに誘おうとしても、あるアイテムらを要求されるのだ。五種の神器を。……いや、アイテムなのに神器とはこれ如何に。
ともあれ、その神器と呼ばれるアイテム、ドロップ率が異常に低い。それこそ、なにも無いところで上に放った矢が落ちてくるタイミングでちょうど敵が通るレベルで。
まあ今俺がこの人とパーティーを組めてるのはそれを集めたからだ。大会で優勝してその賞金でもってる人から買収して。俺の10万円……
そういうわけで、この人とは二人でパーティーを組ませてもらっている。初めて組んだとき、中の人が女性であることに凄く驚いたものだ。
「でも、どうしてもオフ会とかできないの?」
「ごめんなさい……できればやりたいけれど、それは絶対できないの。絶対。」
「うん……なんかごめん」
「いいえ、気にしないで」
ここまでも恒例行事。オフ会とかやってみたいんだけどな……外に出ないのもたぶん過去何かあったからだろうな。大変そうだ。
だが、この後はいつもと違った会話だった。だから印象に残って夢になっているのだろうか。
「いや、でも、ほんとにいつか会ってみたいわ。五種の神器のために10万をドブにすてた酔狂な貴方には」
「勘弁してください」
そして、笑いあう。こんな会話をしたのは初めてだった。
その日はいつもより気合が入って、ドラゴンを10匹くらい間引きした気がする。ほんとに楽しい夜だった。
どこか客観的にその事を見ていた俺は、だんだん視界が白くなっていくことに気付き、こう思った。
――いい夢だった。と。
そこで夢から覚めた。でもなぜこの夢を見たのかは分からないが、とりあえずこれだけは期待してもいいだろう。
「Teruyoさん、幻想郷で会えるんじゃね?だってニートだし、てるよ――輝る夜だし」
今日挨拶に行くところが決まった。
もうお分かりでしょう。
次は蓬莱ニートさんです。




