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episode3

 翌朝、パソコンの電源をつけてメッセージが来ているか確認する。返事はきていない。

 深月、何で返事をくれないの? 今、どこにいるの?


 相変わらず執筆スピードは速くて、文字数もどんどん増えてるし文章も綺麗だ。

 私は深月の真似をして小説を書き始めたけど、深月にはかなわなかった。彼女には、多分文章を書く才能があるんだと思う。

 『翼を広げ』はまた更新されている。最近はこれに力を入れているらしく、毎日更新されている。展開も、面白い。

 それを読んでいると、あることに気がついた。


「これ、私がネタ提供したやつ……」


 それは、主人公の女の子が親に男の子とのつながりを切れと言われるという場面だった。

 もう、無理。どう考えてもこれ、深月でしょ。むしろ、深月じゃなかったら誰なの。でも、何でメッセージくれないんだろう? まず、生きてるの? 死んでるの?

 わけが分からない。生きてるのだとしたらどこにいるのか、なんでみんなから深月の記憶が消えてるのかが不思議だし、死んでいるのだとしたらなんでなろうの更新が出来てるのか……。

 本気で分からない。なんなの? どうなってるの? 疑問ばかりだ。


「……はあ」


 誰も深月のことを覚えていないんだから、相談なんて出来ないし。どうすればいいの?

 もやもやした気持ちのまま、私はなろうのタブを消した。



 次の日。学校に行くと、やっぱり深月の席はなかった。あるわけがない。もうきっと、この世界から『島田深月』は消えていて、みんなに忘れられてしまっている。だけど、『月代うさ』の記憶はなろうユーザさんには残っていて、そして私にも残っている。

 やっぱり、私は『島田深月』も『月代うさ』も知っているから、深月の事を忘れなかったのかもしれない。私だけが、彼女の秘密を知っていたから。……私だけが。

 私だけが、彼女の本当の友だちだった。彼女だけが、私の本当の友だちだった。私は深月のことが大好きだった。深月の書く小説も、それを私が褒めたら見せる笑顔も、全部全部大好きだった。ううん、今も、ずっと大好き。

 いつでもそばにいてくれた。私には、深月しかいなかったんだよ。深月しか、友だち、いなかったんだよ。

 ねえ、知ってた? 私、少しだけ深月のこと、うらやましかったんだ。誰とでも仲良く出来て、フレンドリーで、明るい深月が。クラスの中心だった、人気者のあなたが。

 でも、いいんだよ。私は、そんな深月の一番の友だちになれて嬉しかったから。深月はもういないのかいるのかよく分からないけど、それでも私の心の中にはいるよ。


 だから絶対、私、深月のこと見つけてみせますよ!



「……と、張り切ってはみたものの」


 無理だろ、どうやって捜すんだよ! まず生きてるか死んでるのかもわからないのに!

 いや、でも更新が出来るということは生きてる? っていうか、この世界に天国とかってあるの?

 だめだわからない!

 家に帰ってきた私は、考えすぎたあまり頭が爆発しそうになって、ベッドに飛び乗っていた。そして、枕を掴みバンバン壁に叩きつける。とにかく、私は今イライラしているのだ。

 ふざけるな、わからないじゃないか。誰にも相談は出来ないし。


 なろうを開いてみると、深月は活動報告を作っていた。それを覗いてみると、最近調子がいいみたいなことが書かれていた。

 確かに、生前とは比べ物にならないほどのスピードで更新されている。うらやましいよ。

 でもまあ、学校には来ていないのだから時間はあるだろうし、当たり前なのかな? どんだけ時間あるんだよ深月……。

 活動報告のコメントを見てみると、またコメントが来ていた。


「佐上舞

 うささんお久しぶりです。

 元気そうで何よりです(*^^*)

 学生なのにここまで書けるなんてすごいですね。私もうささん見習って頑張ろうと思います」


「リズ

 うさちゃんすごっww

 なんやの、もしかしてうさちゃんって超人?(笑)」


「東

 月代さん、こんにちは。

 絶好調ですね! その調子でがんばってください」


 もちろん、ちゃんと返信している。しかも、こまめにチェックしているのか、それぞれのコメントが来たすぐあとに返信している。


「月代うさ

 佐上さん

 お久しぶりです! 元気ですよ~(笑)

 いやいや、そんなことないですよー。がんばってください!


 リズちゃん

 すごいでしょ(笑)

 超人ではないよw

 普通の人間だよ


 東さん

 こんにちは! お久しぶりです。

 ほんとに、絶好調すぎて怖いです(笑)

 ありがとうございます、がんばります!」


 それを見て、私は考えた。活動報告にコメントをしてみては? と。


「カナ

 うさ、久しぶり~。

 元気してる?

 すっごい更新してるね。頑張れ!」


 キーボードで文字を打ち込み、送信ボタンをクリックする。

 『コメントを投稿しました。』という文字が表示されたのを確認すると、私はなろうのタブを消して一階のリビングに下りた。

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