001
「これが、きみの望んだ世界だ──これが、きみの現実だ」
これが、俺の望んだ世界──俺の現実。
真っ暗闇に不気味に佇む"何か"はゆっくりと俺の元へと近付いてくる。
つい先程まで踏切をはさみ、向かい合っていたはずの距離はもうない。
その"何か"は今まさに俺の前に──
「なにボーッとしてるんだよ。死ぬのにはまだ早すぎるんじゃないの?」
突然聞こえたそんな可愛らしい声は、しかし感情のこもった声音ではなく、まるで温度をもたない冷淡な声音で、まるで俺を責め立てているかのようだった。
声とともに、目の前の"何か"は霧散した。何も無かったかのように、俺の目の前にはただただ空間のみが広がっていた。
「よっと」
そして、刹那の沈黙のあと、それがあった場所──つまり俺の目の前に一人の少女が舞い降りた──というより、降り立った。
そしてその少女は体勢を整えると、真っ直ぐ俺に向き直り、こう言うのであった。
「やあ、はじめまして。私はきみの命の恩人──名前はまだない」
とんだ黒猫に目をつけられたものであった。
これは、こんな俺が願ってしまった不思議な物語──すべてはこの日、数時間前に始まった。




