第33話
48日目
朝起きると久しぶりに鍛錬をした。水冷魔法はしばらく使っていなかったので、少し勘が鈍っていた。やはり日々の積み重ねが大事だね。
午前中は狩りと家畜の世話で終わった。
午後からはちょっとやりたいことがある。それは薬の検証と作成だ。今手もとには3種類の薬草?と5種類の薬がある。
内訳は薬草、毒草、痺れ草、回復薬、止血薬、解毒薬、胃腸薬、増血丸だ。
最終目標は薬草を調合して、より効果の高い薬を作ることと、狩りに使えるような毒を開発することだ。
普通の薬草や乾燥させておいた薬草をすりつぶしたり、水で溶いてみたり、煮てみたりと色々な加工をした。どうすればより飲みやすく、より濃厚になるかを考え調合しては、試のみをしていると、あっという間に時間がすぎていく。
毒薬を飲んで解毒薬を飲む、痺れ薬を食べて解毒薬を飲む、わざと怪我をして止血薬や増血丸を飲んでみたりして薬の効果の確認も行った。
冒険者が持っていた薬はさすがだった。解毒薬を飲むとスーっと体が楽になっていくし、傷口に止血薬を塗ってみると、血が徐々に固まっていき出血を干満にしていく、回復薬や増血丸を飲むと、体の内側が熱くなり力がわいてくるのがわかった。
それに対し俺が作った薬はまぁ大目に見て効果は半分といったところだろうか。作った薬は回復薬と毒薬、痺れ薬だ。どれも飲んだ瞬間たちどころに効果が現れるといった感じではなく、じわじわと効いてくる感じだ。ただ毒薬はせいぜい体調を悪くするくらいで、飲んだら死んでしまうというようなものではないし、痺れ薬も体が動かなくなるとかではなく、麻酔を打たれたような感じになって動き図らいといった具合だ。
まぁこれはこれで狩りとかには使えそうなんだが。
辺りを見回す。日はだいぶ傾いてきたがまだまだに日没まで時間がありそうだ。俺はロンを伴って森に野草の採取に行くことにした。薬草とかに使えるものがあればと思っての行動だ。
森の中に分け入ると、目に付いた草やキノコを片っ端から口に入れていく。解毒薬を持ち歩いているので毒にあたっても大丈夫だろう。
意外にも食べれる植物が多かった。たまに口の中がピリッとする奴もあったが基本的に食べれる。中には食べた後体力が僅かたが回復するのがわかるものもあった。
しばらく採集を続け、それなりの成果が上がったところで一休みする。
ロンも森の中を歩きまわったせいか少し疲れているようだ。
腰を下ろし水を飲んでいると、目線の先にキノコ群があった。
地味な色だけどなんかおいしそうだな。ちょっと食べてみるか。
俺は近づき口の中に放り込む。味は中々だ。
しばらく咀嚼し、飲み込んだ。すると突然胸がむかむかし始める。
やば!!毒キノコだったかも…
気付いたときはもう手遅れだった。体が痺れはじめ、立っていられない。体が毒を拒絶し、嘔吐を繰り返すが一向によくなる気配もない。
体を吐しゃ物まみれにし突っ伏す。
今獣が来たらやばいな。ん??てかロンはどこに行った?大丈夫なのか?
俺は猛烈な吐き気やめまいと戦いながら必死にロンの気配を探る。しかし近くにいる様子がない。一体どこに行ってしまったんだろうか…思考の合間にも吐き気や痛みがやむこともなく、冷静に考えることも出来なかった。
もう胃の中も空っぽになり吐く物がなくなった頃、なにかの気配がした。
目の前に草の塊が落ちてくる。目線だけを何とか上に向けるとそこにはロンがいた。
この草を食べろといっているのだろうか?
何とか草を口元に運びこむが咀嚼する力が残っていない、そのまま飲み込もうにも草のままでは無理だ。
俺が必死にロンが持ってきてくれた草を飲み込もうとしていると、ロンが突然えづきだした。
ロンも毒キノコを食べてしまったのか?
俺の心配とは裏腹に、ロンが吐き出したものは恐らくさっきまで草だったものなのだろう。緑色のドロッとしたもの吐き出した。
俺はそれを口に含み仰向けに転がると、時間をかけゆっくり飲み込む。ロンが心配そうに首をかしげながら、俺の顔を覗き込んでいる。
ありがとう。
口に含んでいる分の全てを飲み込む頃には、体が徐々にではあるが動くようになって来た。
効いた。
やはり野生の生まれであるロンは本能的に何が必要なのかわかったのだろう。俺が苦しむ様子を見てすぐさま解毒作用のある薬草を持ってきてくれたのだ。
俺はほんとうにかけがえのない存在を得たと、しみじみとかみしめる。
何とか動けるようにまでなると、念のため解毒薬を一口飲む。毒素が完全に抜けるまでその場で休むと、ロンが持ってきてくれた薬草を採取して家に帰る。
家畜の世話をおえ、ロンとの夕飯を済ませるとさっそく今日とってきた薬草を調合していく。今回の成果はなんと言っても毒消し草の発見だ。ロンに感謝をしながら薬の調合をしていく。
今日一日ずっと石臼で草をつぶして終わってしまった気がする。でも人間が作ったものほどではないが、薬っぽいものを作れたからよしとしよう。




