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第2話

 2日目

 


 「ん、あ~~~~。」

 朝日の光を浴び俺は目覚めた。


 なんだかすごい違和感がある。

 目の前に広がる森を見て、思い出した。俺ゴブリンになったんだ。

 

 いやーいい天気だ。

 「今日もっ・・・」

 声を出そうとして、気がついた。喉が痛い、粘ついている。そりゃそうか昨日から何も飲んでないしな。よしまず水場探しだ。

 

 一角猪(いっかくいのしし)の肉をつまんで食べると、装備を整え、拠点から飛び降りた。


 今の俺の装備は

 ・木製バット

 ・小さな角

 ・腰布

 ・ツタで作ったベルト


 以上です。ちょっと心もとないけど、これしかないし、なにより喉が渇いた。装備を整える前に水を確保しないと、干からびて死んじゃうぜ。

 まずどっちに進むかな?う~~~~~ん・・・

 しばらく色々考えていると、不思議な記憶が出てきた。たぶんこのゴブリン生い立ちだ。

 簡単にまとめてみると。

 

 ・生後1週間くらいである

 ・手が奇形、他のゴブリンはもっとゴツゴツしてて不器用そう

 ・生まれて4日くらいで、餌を自分でとってくるように言われ、森に置き去りにされた

 ・木の実や虫で食いつないでいたが、迷子になり帰れなくなった

 ・一角猪と遭遇し追い回され、崖から落ちる。

 

 迷子かぁ、抜けてたんだなぁ俺。でも有用な情報もあった。一つ目は、そう遠くない距離に、同族がいるということだ。合流できれば、生存確率がだいぶ高くなりそうだ。二つ目は、日本語以外の言語があること、そしてそれを多少なりとも、覚えていたことだ。これで意思疎通もはかれる。ただ、語彙は少なく、どこまで複雑な会話ができるか、わからないけど。そして3つ目、これが一番大事な情報だ、崖の反対側を歩いていくと、小さな池というか沼があるみたいだ。距離はわからないが、水を飲んだ後一角猪(いっかくいのしし)に追われて、崖まできたみたい。


 ただ悪い情報もいくつか、まずゴブリンは、この森で、かなり弱い部類に入るみたいだ。群れでいることによって、何とか生き延びている状況らしい。1対1でゴブリンより強い生物はたくさんいるし、ゴブリンの集団ですら、かなわない獣もいるみたいだ。

 


  たぶん俺が知らないだけでまだまだ危険な生物がたくさんいるんだろう・・・

 かなりやばいな、なんか自信なくなってきた。


 これからの活動方針は、食料と水の確保ができたら、装備を整え、ゴブリンの集落を探しに行く。こんな流れになりそうだな。とりあえず水場に向かおう。


 池に向かう途中、トカゲや蛇、うさぎに似た獣など色々な生物を発見したが全部無視。とりあえず水だ。

 記憶を頼りにしばらく進むと、獣道に出た。獣道を鹿の群れが行進している。先頭を歩く雄は立派に枝分かれした4本の角を持っていた。うん、四角鹿(しかくじか)だな。

 我ながらネ、ーミングセンスの無さに悲しくなる。


 早朝だし水場に向かうのだろう。この群れについていけば池にたどり着けそうだ。

 到着。少し開けた草原と湿地帯の奥に、25メートルプールくらいの池があった。今は水が流れてはいないが、沢のようなものも見える。雨季には水が流れ込んで、草原いったいが池になるのかな?そうなったら、今の倍にはなりそうだ。

 

 これで水には当分困らないな。とか思ってた時期が俺にもありました。

 そうです。今は非常に困ってます。というのも、この池にはとんでもない奴がいたのだ。

 俺は四角鹿に襲われたらいやなので、奴らの反対側で水を飲んでいた。

 

 バシャ!!

「きゅーーー」

 音に気付き俺が顔を上げると、大きな蛇みたいのが、小鹿に襲い掛かっていた。蛇というかやたらと首の長いトカゲかな?ちなみに手も長い。そうあれだ、ネッシーに首と同じくらい、長い手をつけた感じだ。そいつは小鹿の首筋に噛み付き、長い両手を足に絡ませ、水中に引きずり込もうとしている。全長3メートル以上はある怪物になすすべも無い小鹿。四角鹿のボスが助けに向かったが、別の怪物がボスに奇襲をかけた。さすがにボスは怪物(手首蜥蜴(てくびトカゲ))を振り払ったが、その間に小鹿は手首蜥蜴(てくびトカゲ)の餌食になってしまった。


 そんなこんなで俺は困っているわけだ。今日はもう大丈夫として、明日以降の水が問題だ。手首蜥蜴(てくびトカゲ)が小鹿を食べてる間に、何かに水を入れて持ち帰りたいな。

 あたりを見渡すと、大きなヘチマっぽいのがあった。地面に落ちているものの皮を破って、中を見てみると、アボガドみたいな実が詰まってる。実は柔らかく、角と手で簡単に繰りぬけた。これなら3リットルは入りそうだ。


 手早く水をつめると、つるで口をしばりその場を離れる。ついでにもう一個ヘチマアボガドを持ってきた。水をこぼさないように、慎重に拠点に帰る。水筒を倒れないように、石で固定しながら、立てかける。


 「フーーーーーーーーーーーーーーー」

 やっと一息つける。なんだかんだでもう昼だ。腹が減ったなぁ。ヘチマアボガドを食べてみるか。

 

 結果

 味がない。ちょっと青臭い水を食べてるみたいだった。

 腹にはたまったけど、やっぱ、肉が食べたい。というわけで狩にいきますが、なんかバットだけじゃ不安になってきたので、槍を作りました。適当な長さに枝を折って、石で削って尖がらしただけだけど。とりあえず2本作成した。


 ではいってきます。

 狙いは昨日見た兎と蛇、後は鳥が取れたらいいな。


 さっきは西側に行ったから、今日は東に行ってみるかな。毛長山猫にあったらリベンジしてやろう。

 拠点の東側で獲物を追うこと2時間。

 全然取れねー。大きなねずみや山鳥、兎と獲物は多く見つかるんだけど、なかなかものにできない。足音を殺して慎重に近づいても、待ち伏せをしても、いざしとめようとすると逃げられてしまうのだ。

 狩って難しいな・・・やっぱ野生動物の警戒能力ってのはすごいわ。しかし、どうしたもんかな、こんなていたらくじゃ、今後生きていけないよ。

 う~~~~~~~ん。小動物より俺のほうが優れてるものってなんだ?


 知能?知識?武器?パワー?体力?

 

 「体力!?」

 そうだような、今のこの体なら絶対負けない気がする。ひたすら追いかけてみるか。


 まず最初に俺の餌食になったのは、からすくらいの大きさがある山鳥だ。地上で木の実をつついているところを発見し、ひたすら追い回した。山鳥は飛んで逃げるのだが20~30メートルも飛ぶと、地面や枝に着陸する。そこに間髪いれず石を投げ込み休ませない。山鳥が5回目に飛び立った時、すぐにふらふらと降りてきた。


 チャンスだ!!

 俺は全力で距離をつめ、槍を横になぎ払う、山鳥は木にたたきつけられ動かなくなった。


 「山鳥獲ったぞ~~~!」

 俺は獲物を拾い上げると叫んだ。なんともいえない昂揚感だ。苦労が報われた達成感と、自分の獲物を誇らしく思う気持ちが混ざり、ものすごく気分がいい。

 狩の成功をひとしきり喜ぶと、獲物の血抜きをした。先ほどの充足感とは打って変わって、少しの罪悪感と、後味の悪さが心を支配した。


 自分の意思で逃げる動物を殺したんだ。これからこんなことは、数え切れないくらいある。いちいち落ち込んでたらきりが無い。そうわかっていても初めての経験になかなか気持ちの整理がつかなかった。


 一角猪の角で鳥の首に穴をあけていく。ある程度あけたら、頭を落としさかさまにして地を抜いていく。血が滴り落ちるのをみていると、今度はふつふつと感謝の念がわいてきた。


「いただきます。」

 それに、俺もいつかは他の動物や、植物のエネルギーに変わるんだし。

 なんか森と一体になって生きてる感じがして、壮大な気分になった。これからも森の恵みに感謝しよう。


 ある程度血が抜けたから次の獲物を狙うことにした。山鳥の足を縛り、背中に背負うと再び歩き始める。

 次に見つけたのは、今日は何度も煮え湯を飲まされている兎だ、茶色い毛並みに、兎とは思えないような器用な手がついている。若干リスに近いかな。

 全力で一気に距離をつめる。予想どうり気付かれ兎は逃げていった。しかし、ここからが今までの俺とは違うところだ。つかず離れずの距離で追跡開始だ。相手がペースを落とそうとすると、石を投げたり、こっちのペースを上げたりして、プレッシャーをかけ続ける。30分くらいの逃走劇のあと、無事兎をしとめた。

 この調子で今日は兎2羽、山鳥2羽、30センチくらいのトカゲを1匹捕まえた。

 半日森を駆け回ってたので疲労困憊だった。この方法成功する確率は高いけど、ちょっときつすぎる。今日はもう十分取れたし拠点に帰ろう。


 帰途に着きもう少しで拠点だというところで、聞き覚えのある鳴声を聞いた。


 




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