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第27話

43日目




 うっすらと空が白んでいく中で、俺は木や竹の槍をやぶの中に、ロープやネットを木々の間に設置していく。

 今日は鹿を狩ろうと思って太陽が登る前から家を出、四角鹿が通る獣道の脇に罠をセットしているのだ。


 昨日観察したところ、群れはボスを中心に統制が取れており、常にオス達が群れの周囲を警戒していた。さらにボスがかもし出す雰囲気は中々のもので、たとえ1対1であろうとも、容易な相手ではなさそうだった。


 そこで、罠を使い、1匹でも2匹でも取れればいいなと思って朝早くから行動しているのだ。野生の獣なら恐らく朝夕に水場に向かうはずだから、今から準備して、風下で気配を消して待てば何とかなる気がする。



 罠をセットし終わると俺は予定どうり獣道の風下30m位のところで四角鹿を待つ。この距離ならまず気付かれる心配はないし、魔法での奇襲も充分仕掛けられると思ったからだ。

 

 

 しばらく待つ。日が昇りあたりがだいぶ明るくなった頃に、獲物がやってきた。

 ボスを先頭に獣道を行進している。最後尾にもそれなりに強そうなオスの固体が配置されており、先頭と最後尾までの間も、一定の間隔でオスだと思われる固体が歩いていた。


 かなり知恵が回るんだな。油断せずに行こう。


 群れの中心が俺の前まで来る。1番警戒が弱く、歩いているオスの角もまだまだ年季が浅そうでそんなに強くなさそうだ。

 

「#%&ЖП~~~~~~」

 俺は咆哮を上げると同時にやぶから姿を現すと、鹿の群れに向かいながら炎魔法で小さな爆発音を連発させる。さらに、火炎弾を何発か牽制のため、群れのボスと№2と思われる奴に向けて放つ。


 鹿の群れはいっせいに飛び跳ね俺と反対方向に逃げ出す。

「キュ~~~~ン」

「クェンクェン」

 

 しめた!!ネットと槍衾に一匹づつかかったな。


 俺は突進しながら罠にかかりもがく鹿の姿を確認した。ネットにはメスと思われる固体が、槍には若いオスがわき腹を貫かれている。


 俺が獣道まで出ると、丁度ボスも俺の前に出てきた。

 角を振りかざし俺を牽制してくる。


 クソ!!見捨てたりしないのか。どうする?一旦引いて様子を伺うか?


 俺はボスと対峙しながら後ろにいる鹿達を観察しする。その時俺は驚愕の光景を眼にすることになった。なんと№2の鹿が罠を解除しだしたのだ。

 四本の立派な角がほんのり赤く輝きだしたかと思うと、角をネットにあてがい始めた。すると、ネットが見る見る焼き切れだしたのだ。

 角にかなりの熱があるのだろう、空気がゆがみ陽炎が見える。


 ちくしょー。予想外だ魔法まで使えるのか?これはもう諦めて引き下がるべきだな。1対1ならまだしも、№2まで来てしまったら明らかに劣勢だ。


 しかし、俺の予想とは裏腹に、ネットから雌鹿を助け出すと2匹は一緒にどこかへ消えて行った。

 それを確認すると、ボス鹿も俺に背を向けやぶの中に入っていく。わき腹を突き刺された若いオスの元へ行き軽く鼻をあわせると、そのままどこかに行ってしまった。


 まぁもう助からないだろうし、群れ全体のリスクとかを考えると、これが正しい判断なのだろうけどなんか悲しいな。いや俺のせいでは有るんだけど…しかし、あのボスはなかなか優秀だな。これからも簡単に鹿肉を取れるとは思わないようにしよう。

 

 俺は見捨てられた鹿に近づくと、首筋にナイフをつきたて止めを刺してやる。わき腹の傷が致命傷だったのでたいした抵抗も無く、力なく痙攣すると鹿は絶命した。

 罠からはずし血抜きを始める。心臓付近や首筋などの太い血管を切り裂き、木に逆さにつるす。


 こうしてみると結構大物だな。体重150kgは有りそうだ。北海道で見られる鹿よりも大きい気がする。若そうなこいつでもこの大きさだ。全体的にかなりの大型種なのだろう。狩猟方法さえ確立できればいい食糧現になりそうだ。


 血抜きもそろそろ終わったかなという時に、いや~な気配がした。槍を構え臨戦態勢に入る。


 やばい!囲まれてるな、かなりの数だ。しかもかなり近いぞ。何でこんな接近されるまで気づかなかったんだ?


 俺が周囲を警戒し気配を探り始めると、それを悟ったのか襲撃者達が姿を現す。

 毛が全体的に緑と茶色で覆われ、この前であったのもより一回りは大きい狼達だった。

 

 これは!?緑狼か、冒険者達の地図どうりなら生息区域はこの辺ではないはずなんだけどな。


 俺を取り囲み徐々に距離をつめてくるそいつらを観察する。

 長い足に引き締まった体はかなりの俊敏性があることを伺わせる。さらに、緑色の毛も一役買ってか、気配がつかみ辛い、接近するのに音もほとんどたてていないのだろう。全体の数が把握できない。

 さらに、目の前の狼達の後方には一際大きな気配を感じる。普通の奴らが気配を消し居場所を悟らせないのに対し、そいつは堂々とこちらに向かってくるのがわかる。恐らくこの群れのボスなのだろう。



 まずいね…勝てる気がしないよ。鹿は勿体無いけど、俺まで餌にならないうちに逃げるかな。


 そう決断した俺はボスが来ないうちにと、すぐさま行動を起こした。

 槍を左手に持ち帰ると、右手に火炎爆弾を作り出し、通常より余分に魔力をこめると前方に投げつける。それと同時に狼達に背を向けると一目散に駆け出した。


 ボボッーーーン!!


 俺は背後に回っていた緑狼を蹴散らしながら、後方で爆発音が聞こえるのを確認した。魔法はうまく作動してくれてるようだ。実戦で使うのは初めてなので不安もあったし、効果も確認していきたいところだが、振り返る余裕など無かったのでそのままとんずらした。



「はぁ~~~~せっかく早起きしたのに収穫ゼロかよ。」

 俺は家に変えると論に愚痴をこぼす。ロンは首をかしげながら俺の話を聞いてくれていた。

「ロンこの後どうしようか、なんかやる気起きないよ。今日は休日にしていいかい?」

「ウォン!」

「ありがとう。もう今日はだらだらするは。」


 俺は最低限の家畜の世話以外やらないと誓った。

 さっそくユニ山羊や鳥達に餌をやり小屋の中を掃除すると、飯を作りながらだらだらする。


 天気がいいのでロンと外でごろごろしていると気持ちがいい。


 そんなことを思っていたら、あっという間に夜になってしまった。思い返せばこの世界に来てから毎日必死でゆっくり休むことも無かったし丁度良かったかもしれない。


 また明日から頑張りますか。



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