第23話
36日目
晴れた!!ん~~~~久しぶりの太陽だ。
俺は朝起きるとロンを抱いて外に出る。ロンもなんだかうれしそうだ、地面におろしてやるとさっそく駆け回りはじめた。戻ってきたところを再度抱き上げると、腕と胸に冷たいものが当る。
あ~~~、昨日までの雨で地面グショグショだ。普段より走りずらそうだな。
とりあえず出発や。と、その前に確認だ
俺はロンと眼を合わせじっと集中してみる。
「お!でてきた。」
少しすると、ロンのステータスが頭に入ってくる。信頼関係を気付けている証拠だな。えさをあげてるだけだけど。
ロン
銀魔狼 幼生 オス
森の狼
レベル2
見事に何もないステータスだな、二つ名もなければ、スキルもない。ただ、ロンは普通の狼じゃなかったんだな。確かに親狼はかなりの大きさだったし。将来かなり期待できそうだ。今は色が濃く黒っぽい茶色だが、大人になったら銀色になるのかな?超かっこいいな。それに魔狼ってどういうことだ?魔力を持ってるとか、なにか違いが有るのかな。まぁいずれわかるでしょう。
銀魔狼なんて物々しい名前とは裏腹に、無邪気な顔でこっちを見てくるロンに声をかけ、南西の森の中へ向かう。
ロンが我の足元にまとわり着き騒いでいる。物珍しいのか興奮しているようだ。ただ少し不安もあるのか、いつものように駆け回ったりせず、俺から離れない。
こんな騒がれたら狩に支障があるな…
俺は森の中に分け入ると気配を消す。ロンも俺の雰囲気が変わったことがわかるらしく、きょとんとして俺のほうを見てくる。
「し~~~~~。」
俺は姿勢を低くしてロンの頭を軽く抑える。すると俺の意を汲んでくれたらしく、ぎこちなくはあったが、ゆっくり静かに歩き始めた。
よしよし、良い感じだ。勘がいいな。
しばらく進むと、水溜りで水を飲む兎の群れを発見した。ロンはまだ気付いていないようなので、腰を叩いて進む方向を誘導してやる。
15mほどまで近づいたときに、ロンが兎に気付いた。その瞬間声を上げて駆け出す。
「馬鹿野郎!!」
俺も急いでやぶから飛び出し魔法を放つ。
結果、6匹はいた兎の群のうち1匹しか仕留められなかった…嬉しそうに尻尾を振っているロンが恨めしい。
なに俺やりましたよ敵な顔してるんだよ。
「こら!慌てて飛び出したらだめだべ。男は我慢が肝心だぞ」
「キュ~~ン」
悲しそうになくロンを見たらちょっと罪悪感がわくが、ここでしっかり狩りを教えられないと、いざという時困るのはこいつだ。
小休憩をいれ気を取り直すと、再び獲物を求め歩き出す。
慣れてきたのか、ロンの気配の消し方も中々様になっている。さすが肉食動物だ。
次に発見したのは苔豚だ。またロンが飛びださにないように、左手で体を押さえつけ、右手には氷槍を作り慎重に近づく、射程距離に入ったところで氷槍を放つ。
グサッ!!
狙いどうり氷槍は苔豚の太ももに突き刺さる。
「よし行け。」
抑えていた手をどけるとロンは一目散に苔豚に向かって走り出す。
「ガウゥ~」
氷槍の刺さっている足に噛み付く、俺も追いつくと殺さないように足や、頭にダメージを与える。苔豚がよろよろと歩き始めると、ロンが喉元に喰らいついた。
おお~わかってんじゃん、本能でやってるのかな。
さすがに子供の力で倒せるわけもなかったので、最後は俺が止めを刺した。
「よくやったぞーえらいえらい。」
ロンをもみくちゃにしながら褒めてやる。ロンも嬉しそうだ。
ご褒美に、その場で苔豚を解体し内臓を食べる。魔法であぶると、あたりに良い匂いがたちこめ、食欲をそそる。
新鮮なレバー最高だな。
朝飯がまだだったので、俺もロンも夢中で肉を食べた。苔豚はキノコを食べてる途中だったらしく、肉厚でおいしそうなキノコがそこここに生えている。それも一緒にあぶり食べた。
「ふ~結構食ったな。」
きのこと内臓のフルコースで腹がいっぱいだ。ロンもなんだか眠たそうにうとうとし始めた。子供だし飯を食ったらすぐ眠くなってしまうのだろう。
今日は充分な収穫があったし帰ろうかな?
そんなことを考えていると………
ガサガサッ!
前方の茂みが激しく揺れだした。ロンも異常に気がついたのか、俺の後ろに隠れる。
「って。隠れるんかい!!」
そんな軽口を叩きながらも、俺は臨戦体勢を整える。
出てきたのは2匹の毛長山猫だ。
う~~~ん、ほんとこいつらにあうの獲物を仕留めた後だけだな。まぁ新手の獣じゃなくて良かった。こいつらなら、今の俺にとってそこまでの脅威じゃねぇ。
「ヴオォォォ~~~~~~~~!!」
「ウォ~…ン」
挨拶代りに咆哮をあげると、ロンも真似をして声を上げている
毛長山猫は分が悪いことを悟ったらしく、距離をとってうろうろしているだけだ。俺はダメ押しにと、小さな炎弾を何個か作ると、毛長山猫に向けはなつ。それと同時に声を上げて突っ込むと、奴らは一目散に逃げていった。
「雑魚が、調子に乗るんじゃねぇよ。ロンもよく頑張ったな。」
論の頭をくしゃくしゃしながら声をかける。緊張がとけたせいか、疲れた顔をしている。
「よし、今日はもう帰ろう。」
獲物を背負子にのせ、家路に着く。
やけにロンが静かだ。とぼとぼとしかついてこない。
まだ赤ちゃんとも呼べるロンにはハードすぎたかな?
仕方がないので抱き上げてやる。よほど疲れてたのだろう、ロンは俺の腕に収まると、すぐに寝てしまった。
家に着くとロンを寝かせて、豚の乳なし簡単離乳食を作ってやる。もう普通の肉でも大丈夫かと思っていたが、今日の体力のなさを見ると、まだまだ手間をかけてやったほうがいい気がしてきたのだ。
離乳食を作り終わった後は、今日の獲物の処理をして、道具つくりだ。
今日はコモドドラゴンメイル。銅鎧を作り始めようと思います。モコ狸のおかげで、丈夫な紐も出来たし、いいものが作れそうだ。




