一日目
1日目
はい!はじまりました。
僕の第二の人生。といっても、もう1時間ほどったっていますが。
まずは現状の把握から。
1場所について
大きな森の中。崖にのぼって確認したけど、見渡す限り森か山だ。ちなみに崖は一部分だけで、なだらかな丘の一斜面だけだった。周囲100メートルくらい歩いても、同じような木々が茂っていた。
2動植物について
日本とは全然違う。森の中だけあって多様な生物がいたが、見たことないものばかりだった。ただ、なんとなく特徴や見た目が見ているものが多かった。羽が2枚のちょうちょや、やたらでかくて地上を歩く、カブトムシの幼虫みたいなのとか。まだ哺乳類型は観てないな。
3気候について
今は結構暑い、気温30は越えてる感じかな。今の体での感覚だから、全然違うかも知れないけど。四季とかあるのかな?
4俺の体について
まぁ前に言った感じだね。端的に言うと、映画とかに出てくるゴブリンみたいな感じ。この世界でなんていうのかわからないけど。顔はまだ見れてないから、わからない。
以上。
情報が少なすぎるな。これからどうやって生きてけばいんだ?
あのまま死んだほうが、楽だったなんて、展開にならなきゃいんだけど。
思いつめても仕方ないし、ポジティブにいこう。こんな世界こそ俺の憧れだったじゃん。今こそ、無人島漂流小説とか、サバイバル本とか読みまくってきた、成果を見せるときだ。
よし何からはじめるかな。まずは水の確保、そして火、後は食べ物、まずはこの三つだな。それができたら寝る所と、服も何とかしたいな。さすがにふんどし1枚はな、誰が見てるわけでもないんだけどさ。
ということで、水を探しに行きます。どうしようか、崖から見た感じ、全然見つけられなかったしな、闇雲に歩いてみるか。
とりあえず、東に行って見るか、なんとなく地面下がってるっぽいし。この世界でも太陽は東から昇って西に沈むのかな?
「シャーッ」
音のするほうを見ると、毛の長い山猫がいた。こっちを威嚇してるみたいだ。体は小さく、体高30センチくらいだ。しかし、鋭い爪と牙は、俺の肉など、簡単に引き裂けそうだ。
俺は近くにある木を棒を手にすると、ゆっくり後退した。
やばいな、考えてなかったけど、肉食の獣だっているよな。だいたい猪だって、あんなに凶暴だったんだ、もっとやばい奴がいそうだよな。無防備に歩き回るなんてうかつだった。
毛長山猫と目が合わなくなると、一目散に崖に向かった。
崖に着くと、俺の不安は的中しており、猪の死体に、青黒い毛並みをした、犬のような獣が、3匹群がっていた。体長は60センチほどで、顔は犬なのだが、手足は猿のように動き、華奢な体に不釣合いな、大きな5本指の手と、鋭い爪を器用に使い、猪を貪っていた。とりあえず猿人犬と命名した。
「ヴ~~~」
猿人犬たちは俺に気がつくと、身構え威嚇してきた。しかし、俺もこの程度で引く気はなかった。この弱肉強食の世界で、逃げてばかりでは、生き残れないと感じたからだ。なにより、大事な猪の肉を、こんな奴らに渡してたまるか。
距離は約30メートル。猿人犬どもは自分たちから攻撃する気がないようで、猪を囲み唸り声をあげている。
俺は手ごろな石を、何個か右腕に抱えると、左手に木の棒を持ち、じりじりと距離をつめた。
「ヴ~~~ッワンワン」
猿人犬が激しくほえ始めた。これ以上近づけば攻撃してくるのだろう。
元高校球児の力を見せてやる。俺は石を一つ握りなおすと、真ん中の猿人犬に狙いを付けた。右腕が熱くなり、力がみなぎるのを感じる。
「ぎゃん」
石はものすごい勢いで飛んでいき、遠距離攻撃を想定していなかっただろう、猿人犬のわき腹に直撃してた。石がぶつかった個体は後方に跳ね飛ばされる。
続いて左にいる個体に向け2、3球目を投げながら一気に距離をつめた。狙いは外れたが、石に警戒し後方に下がる。それを確認し、俺は右側に構えている奴に向かった。バッティングの要領で木の棒を振り抜いた。
味方が後方に下がるのに動揺していたのか、何の抵抗も無く、フルスイングが頭に直撃した。猿人犬が崖に激突し、動かなくなるのが見えた。
すぐに左を向くと、最後の猿人犬が飛びっかてきていた。
左肘に牙が食い込み、血が吹き出た。
木の棒を捨て、右手で喉輪をかまし、そのまま相手を押し倒し、両腕に全体重をかける。猿人犬が左肘を吐き出そうと、えづくがさらに力をこめる。そのまましばらくすると、ブルッ痙攣し動かなくなった。
顔を上げると、最初に石の直撃をうけた猿人犬が、びっこを引きながら逃げていく。
勝ったか。
緊張がとけると、足ががくがく震え始め、ものすごい疲労感と、飢餓感に襲われた。
腹減った・・・こいつらを食べるのか?
さっきまで、自分の手の中で暴れてるのを思い出すと、吐き気がしてきた。
自分の手で命を絶った事の、罪悪感が今さらわき上がってきた。しかし、それと反比例し空腹感が募ってくる。どうしようもなくなり、俺は猿人犬にかぶりついた。皮を裂き肉を食らう、ものすごい吐き気を我慢しながら、無心で食べ続けた。
猿人犬を二匹食べたところで、ようやく食欲がなくなってきた。
「これじゃ、ただの獣か化け物だな。」
くそっ、俺は人間だったんだから、そのことだけは忘れないようにしよう。
人間らしい暮らしってなんだろうな?肉くらい焼いて食べるようにするか。よし!!順番変わっちゃうけど火をおこそう。身を守るのにもあると便利だし。
まず乾燥した木の枝、つる、皮、こけなどを集める。その後に木の枝とつるで簡単な弓を作った。後は原始人がやるように、木の棒と板をこすり合わせれば、火がつくはずだ。
しばらくやってみたけど、なかなか難しい、弓を横に振り、木の棒を回転させるのは、だいぶうまくなったのだが、そこでできた小さな火種を大きくするのが難しい。色々試行錯誤し、火種の元を変えてみること、1時間。ようやく火が起きた。
あー疲れた。こんなんじゃ先が思いやられるな。とりあえず火が起きたわけだし、後は安全な寝床、拠点になる場所がほしいな。
そう思い、辺りを見回すと、崖の真ん中辺りが、内側にえぐれ多少のスペースがあった。あそこに登れればだいぶ安全だな。なだらかながれ場を2メートルほど登ると約3メートル上にその場所はあった。
ジャンプして届くかな?なんか行けそうな気がするんだけど。
ためしに、軽くひざを曲げ踏み込み足に力をためた、すると石を投げたときと同じように、足が熱くなり、力がみなぎって来る。
「せい」
掛け声とともにジャンプすると、2メートル以上体が浮いた。
「おお!!やっぱこの体すごいな。」
さっきよりも力をこめてジャンプすると、両手が岩にかかった。よじ登りその場所を改めて確認すると、四畳ほどの広さがあり、その半分は崖がえぐれて、いい具合に屋根になっていた。なんか秘密基地みたいだ。
「いいじゃん。しばらくここを拠点に活動しよっと。」
早速物資を運び込む、大量の枝と、バット状の頑丈な木の棒、火お越し器、一角猪の死体(肉は7割がた無かったけど)、猿人犬の皮2枚、後は投げやすい石を少々だ。
引越しするのに何回もジャンプをしてると、またお腹がすいてきた。太陽もほぼ沈みかけてるし、晩飯食って寝るか。
一角猪の肉を枝に刺し火であぶる。焼けるまでの間に猿人犬の皮と一角猪の角を調べてみる。
角は直径が5センチ、長さ20センチくらいで、先端に向け少し曲がっていた。角だけあってかなり硬く、鋭かった。ちょっと短いけど、いざという時の武器にはなりそうだ。
猿人犬の皮は特に使い道ないな、2枚つなげれば、腰に巻けそうだが、今はいいや。
肉がいい感じになってきたので食べました。ものすごいおいしかった。いい感じに脂身と赤身が混ざっており絶品だ。さっきの猿人犬とは大違いだ。これで塩胡椒があれば最高だけど、贅沢は言うまい。
腹が満たされたら眠くなったきたから寝るかな?
ちょっとのど乾いてきたけど、水は明日だ。




