第14話 地図あり
26日目
猿人犬の肉をつまみながら俺は考える。
どうやったら魔法が使えるんだ?あいつら普通に手とか杖から火出してたよな。
火ね~燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ
俺は右手を見つめながらそう念じてみた。
「アチ~」
右手がだんだん熱をもってきたな~とか思ってると、いきなり右手に火がついた。あわてて猿人犬の肉とかを叩きつけて消す。
やば・・・魔法使えちゃったよ。自分の手、焼いちゃったけど。
もう一度右手に集中してみる。
炎出ろ炎出ろ炎出ろ。
「あち~~~~~~~」
さっきと同じだ。
てか手がやばい、冷やさなきゃだ。拠点まで戻るか。
ん?魔法で水出せんじゃね?
よし。水出ろ水出ろ水出ろ・・・・
右手を見ると、じわ~と汗のように水が出てきた。
おお~何でも出来そうだな。でもこんな少しじゃ全然冷やせない。ちょっと試してみるか。
また右手を見て集中する。
冷えろー冷えろー冷えろー
すると徐々に手に霜が張ってきた。
はい!気がついたら右手が凍ってました。今度は凍傷になりそうだよ・・・
加減がむずい。というか炎魔猫達みたいに火球や水球を飛ばせないのか?
これから訓練してけば出来るようになるのかな?なんにしても師匠が欲しいな。
他にも風を起こそうとしたり、電気や土、光を操れないか色々試してみたが。火と水ほどうまくはいかなかった。
それに魔力を使うと物凄い腹が減る。まだ昼前なのに猿人犬の肉を全部食べてしまったよ。
魔法はまだまだ実用できるレベルるじゃないな。
探索がてら狩りをしながら南に向かうか。
しばらく森の中を歩いていくとなんとなく見覚えがある景色が見えてきた。
てかあれだ始に拠点にしていた丘が見えてきたのだ。
ふ~~~ん、なんとなくこの辺の位置関係がはっきりしてきたな。
地図にするとこんな感じか?
これからどうしようかな?今日は飯の用意が出来たら。崖にある拠点で休むか。
そんなわけで獲物を探しながら森をうろつく。炎魔猫にあえたら嬉しかったのだが、そんな都合のいいことも無く、毛長山猫を一頭と犬の足を持ってる鼠、駆鼠を一頭捕らえて狩りを終了した。最初はあんなに苦戦していた毛長山猫だったが、今じゃ語る必要も無いくらいの相手に成り下がっている。
俺ビックリするくらい強くなっているよな。
拠点に戻り飯を食うと、この世界に来た当初のことを思い出しながら眠りについた。
27日目
朝起きると昨日の残りを食べながら今の状況について考える。
・縄張りと呼べるような場所は虫沼を中心に3キロから5キロくらいで本拠点が一つに仮拠点が二つ。すぐに使える水場が二つ。
・道具は獣の骨や石で作った槍、ナイフ、斧が多数。革製の防具や衣服、かばんが少々。後は竹製のかごと水筒だ。
・家具類としては竹の器とコップ。土器製の鍋や水がめ壺。他に毛皮の敷物などだ。
・自分の体について。この4週間で身長が20センチほど伸び、転生したばかりのときは、骨と皮しかなかった体には強靭な筋肉がついている。
・能力について。パワーはそこそこだが、俊敏性と体力はここら辺ではトップクラスにまでなった。戦闘方法としては、毎日の練習もあってか、自分の倍ほどもある槍をかなり自由自在に操れるようになっている。ただやっぱりまだ棍棒とかの方がしっくり来るのだが。投石、投槍、投斧についてもかなりレベルアップしている。20メートルとるくらいの距離ならまず外すことは無くなってきた。
さらに毎日の狩猟のおかげで索敵能力と隠密能力はかなりの物の筈だ。
・魔法はまだまだで、手付近の温度調節、おそらく-20度から100度くらいまでと、手自体を燃やすこと、じんわりとだが水を出せるだけだ。
ここにきた初日とは大違いだな。
ちょうど飯も食べ終わったので、始りの拠点から南西方向を探索することにした。
のんびり歩いていると多くの獣に出会った。この辺は小動物が多く、雪も無いのに真っ白な毛に身を包んだ雪兎や鋭い爪と牙を持つ爪牙兎、二本の尾と鋭い前歯を持つ双尾栗鼠などを見つけた。爪牙兎はむこうから襲い掛かってきたので返り討ちにしてやったが、雪兎と双尾栗鼠は俺を見るなり、物凄い勢いで逃げていった。追いつけないほどではないが、かなり骨が折れそうなので今回はスルーすることにする。
そんな感じでしばらく歩いていると前方から只ならぬ気配が感じられた。
おそるおそる前に進み目を凝らすと、体長3メートルメートル以上は有りそうな狼と、その狼より大きく全長5メートル程のトカゲが組み合い争っている。さらにその周辺には大小様々なトカゲ達が周りを囲んでいた。
争うというのは少し語弊が有るな、すでに勝負は決まっていた。狼はトカゲの喉元に食いついていたが、もう大して力が残っていないのだろう、その目には猛々しさはなく、トカゲも狼を振り払おうともせず噛まれるまま身を任せていた。狼の後ろ足はすでに食いちぎられ、50センチほどのトカゲの幼生が膝あたりに食いついている。足だけではなく、腹や尻尾に何匹ものトカゲが喰らいついている。
狼も一方的にやられていたわけではないのだろう。狼の周りには皮を引き裂かれ、肉をえぐられ動かなくなっているトカゲが10匹以上はいた。中には体長が2メートルから3メートルほどもある固体もおり、争いの激しさを物語っていた。
うわ~すげぇな、森の怪物頂上決戦て感じだな。しかし、なんて大きさの狼と、トカゲだよ。トカゲのほうはコモドドラゴンとそっくりだな、それに1番でかい奴からは不思議な力を感じる。狼のほうもただ大きいだけじゃない、何か不思議な力を感じるぞ。魔力でも持っているのか?さしずめ魔獣ってところだな。
狼にはかわいそうだがこのまま静観させてもらおう。弱肉強食の世界で自分の適わない相手と争うのが悪い。確かに狼は強そうだしタイマンならコモドドラゴンに負けないのだろう、あたりに散らばっているトカゲの死体がそれを証明している。しかし、この数の群れを相手にするのは無謀すぎる。自分の力を過信しすぎだ。
そんなことを考えていると、戦いが繰り広げられている広場の奥にあった洞穴から、コモドドラゴンの幼生が何匹か出てくる。口に茶色や黒色のものをくわえて。
コモドドラゴンの巣なのかな?
しかしその思いはすぐに覆された。コモドドラゴン達がくわえ引きずっていたのは狼の子供だった。
コモドドラゴンは引きずり出した子狼も寄ってたかってなぶり始める。まだ生まれたばかりの狼たちは弱々しく鳴きながらされるがままだ。
その時親狼の目に力がともり、ボスコモドドラゴンのから牙を抜くと、咆哮をあげながら前足だけで体を引きずりながら子供たちの元に向かう。しかし隙だらけの状態を敵が見過ごすわけもなく、逆に喉元に喰らい疲れてしまった。
それでも狼はコモドドラゴンを引きずりながら子供の元に進む。
そのなんともいじらしい親子の絆を見ていると、だんだん体が熱くなってくる。
「キュ~ン」
子狼の1匹に止めが刺された。断末魔というにはあまりにか細い声を上げ、子狼が動かなくなる。
その光景を見た瞬間頭の奥でなにかが切れる音がした。視界が狭くなり、全身の毛穴が開き、体中の血液が沸騰しているようだ。
俺は気がつくと茂みから飛び出し咆哮をあげていた。
その後はただ本能の趣くまま暴れまわる。狼に喰らいついているボスの横腹に槍を突き立てると、ほら穴付近にいるコモドドラゴンを手当たりしだい爪で引き裂き、牙で食いちぎった。
親狼も最後の力を振り絞り、ボスの喉下に喰らいつき始めた。
俺はほら穴付近のコモドドラゴンを片付けると、中に入る。中でも小型のコモドドラゴンが子狼を襲っていた。
コモドドラゴンたちを瞬殺する、くまなくほら穴を探すが、もうコモドドラゴンは居ないみたいだ。
ふーーーー
体から熱が引いていく。頭もすっきりし、視界も開けてきた。
俺、どんだけ頭に血が上ってたんだよ・・・
冷静になってほら穴を観察する。そこには外にいる狼と同じくらい大きな狼が横たわっていた。しかしその周りには血だまりがあり、すでに事切れているようだ。
出産後に体力が続かなくて死んでしまったのかな?出産といえば子供たちはどうなった?
俺は急いでほら穴をくまなく探す。しかし、見つけられたのは子狼の死体が3匹見つかっただけだ。
遅かったか・・・クソ
その時母親狼のしたから1匹這い出してきた。
登場ベタすぎるだろ。ただ、1匹でも助けられて良かったよ。
俺は子狼を抱き上げるとほら穴の外に出る。そこでは、ボスコモドドラゴンと父親狼が横たわっている。まだどちらも息はあるようだ。
こいつのことすっかり忘れていたよ。
俺はまだボスコモドドラゴンに止めを刺すと、まだ回りをうろうろしていたコモドドラゴンの残党を始末する。
「ほらちびすけ、最後のお別れをいいな。」
俺はそう言いながら子狼を父親狼の前に置く。ぺろぺろと父親狼がちびすけを舐めはじめた。
ああ~~~だめだ、もう耐えれれねぇ・・・
目からどどめなく涙があふれる。
いやーゴブリンなっちゃったけど、涙は流れるし、まだまだ人の心をなくしてないんだな俺。
父親狼の顔を見ると、なにかを訴えかけるような目でこちらを見てくる。
目をみてうなずくと安心したのか、そのまま目を閉じ二度と開くことはなった。
任せとけって。このガキは俺がしっかり面倒見てやるよ。
そこからはすごい大変だった。とりあえず腹が減ったので手当たりしだいコモドドラゴンを食べる。その後穴を掘り狼達を埋めてやった。ただ父親狼は埋めずに肉は食い、毛皮や骨もこれから子供狼を守るために使わせてもらうことにした。俺の血肉となってこれからも子供を守れ。
骨と毛皮もも最上の素材だったのでいい道具が作れそうだ。
続いてはコモドドラゴンたちの処理だ。狼に殺された中型の奴らはずたぼろだったので肉だけを頂戴する。小型のコモドドラゴンと、ボスは丁寧に皮をはがし今後のためにとっておく。小型のものは皮がそんなに丈夫ではなかったが、ボスのものはすごかった。剥ぎ取るのに剣歯虎のナイフ1本と昨日ゲットした猿人犬の爪がほとんどダメになってしまう。ボスの横腹に刺さっていたやりも穂先はぼろぼろだった。
これはいい防具が作れそうだ。
そんなこんなであたりが暗くなってきたから。ほら穴の入口を木の葉や枝で塞ぐと父親狼の肉を喰らい、子狼を抱いて寝る。




