第12話
21日目
朝起きて自分の体を観察してみる。
一回りどころか、三回りくらい大きくなっている気がする。さらに体の中からあふれ出す力が今までとは段違いだ。今まではなんとなく腹の底が暖かいなぁ位のものだったが、今は常に体全体に力が駆け巡っているのがわかる。
槍や木刀を素振りしてみる。
明らかに今までより早い、なによりどう動かせばより速く振れるか、力が余すことなく武器に伝わるかが自然とわかってくる。
次に石を投げてみる。
物凄いスピードで飛んでいき、木の幹を若干えぐっていった。
すごい威力だ。少し腕がしびれるが。
期待以上の変化だな。一気に5レベルくらいレベルアップした感じだ。
これからの冒険が楽しみになって来た。
猪の肉で軽く朝食を済ませると、皮をなめしていく。それと平行し、拠点の近くで見つけた木のうろで猪肉の燻製を作っていく。
暇な時間で、強化された体になれるため鍛錬をした。
やっぱ運動は気持ちいいね。
皮なめしと燻製作りが一段落するとちょうどお昼になったので、余っていた干し肉などで昼食を済ませる。
この後どうするかな?今の体ならよっぽどことがない限り、獣に殺されることも無いだろうから探索範囲を広げてみるか。でもほら穴からはそこまで離れたくないし、どうするべ・・・
う~~~ん
今日は一度ほら穴に戻って、その後虫がいる沼の南方面の探索をするかな?
よしそうと決まったら善は急げだ。荷物をまとめたら我が家に戻ろう。
このサバイバル生活では何が起きるかわからないので、いくらか槍や斧、ナイフ、毛革などを木の上の拠点に残していく。いつかはここを中心にさらに広範囲を探索しよう。
拠点に到着!!
たった2日離れているだけだったが、すごい懐かしい感じだ。そういえば今思い出したけど、外側の壁作り途中だったな・・・・・今日仕上げちゃうか。
そんなわけで戦利品をほら穴にしまうと、土壁つくりを始める。
残りは入口部分だけなので比較的早くできた。
この調子なら日が沈むまでに屋根も作れそうだな。
屋根は竹で骨組みを作った後、藁や大き目の葉っぱを一まとめにし並べていく。最後に風で飛ばないように固定し、入口にドアをつけたら完成だ。
狩猟がうまくいったときもそうだけど、何かを作るのもすごい達成感だな。
夜は大一角猪の皮で鎧作りだ。うまくなめしが出来れば、かなり頑丈なのが出来そうだぜ。
他には苔豚の革を使って半ズボンも作ってみる。
軽くてなめらかな素材なので結構履き心地がいい。この前作った糸が結構役にたってるね。
22日目
「ん、あ~~~~~」
家の前で朝日を浴びながら伸びをする。
なんて気持ちの良い朝だ。やっぱり衣食住がしっかりあって、身の安全に心配が無いっていうのは、精神衛生上すごい良いね。
水筒の水を飲み喉を潤すと鍛錬を始める。
槍を振っていると何か違和感を感じる?いつもより扱いやすいのだが、なんか変な感じだ。
不思議に思い槍を引き寄せよく見てみる。
あ~~~~~なるほど
身長より少し長いくらいで作っていたのだが、背が伸びたおかげで小さく感じていたのだった。
すぐに手ごろな枝を切り落とし削りなおす。あっという間に2本の柄が出来た。
だいぶ手馴れてきたな。
今回150センチくらいの槍と、自分の2倍はある2メートル強の長槍の2本を作った。
軽く朝食を食べるとさっそく槍を持ち狩りに出かける。
う~~んやばいな。
いつものように気配を消し近づこうとするのだが、うまく気配を消せない。
ちょっとでも獲物に意識を向け近づこうとすると、みんなサッと居なくなっていしまうのだ。
原因はわかっている。レベルアップしてあふれ出る力が駄々漏れなのだ。
前は自然と内側に納められていたのだが、今は自分でもわかるくらいに、殺気というか闘志というかそんな感じのものがにじみ出ている。蛇や蜘蛛のような好戦的な奴らでさえ近づいてこないのだ。
ここまであからさまだったら、そりゃ誰だって逃げるよな。
逃げ出した瞬間に全力で追う事で何匹かは仕留められたのだが、時間的にも労力的にも効率が悪すぎる。どうしたもんかね・・・毎日座禅でも組んでみるか?
とりあえず今日は鶏と卵、兎とトカゲを仕留めれたので狩りは終了だ。
家に戻って飯を食べる。
今日はこの後何を使用か、やっぱ気配殺す練習かな?
家の内装も何とかしたいしな。
よし両方いっぺんにやろう。
そういう訳で、極限まで気配を殺しながら作業をする。
まず始にかまど作りだ。土をこね、積み上げ乾燥させる。家の中に料理用で1台、外に燻製用で1台を作成した。気配を殺すのに集中し、物音すらたてないように気をつけながらの作業だったので時間が物凄いかかる。
でも何とか日付の変わるころに大体が完成した。あとは焼入れだけだ。
今日はこのまま気配を消して就寝に尽きます。
気持ちだけだけど
23日目
「ブルルッ!」
苔豚が鼻を鳴らしながら歩いている。
俺は木の上に隠れ、森のざわめきに合わせ呼吸をする。
カツカツカツ
苔豚が少しづつ近づいてきた。
今だ!!
俺は木の上から飛び降りると、苔豚の首筋に斧を叩きつける。
肉が裂け骨が断ち切れる。激しく血を噴出しながら苔豚がゆっくりと倒れていく。
やっと一匹仕留められたな。
もう昼過ぎなのに、朝から狩りを始めこの苔豚が初めての成功だった。
今日は気配を消す練習もかねて、飛び道具は使わず接近戦のみで狩りに挑んだのだが、なかなかうまくいかなかった。
体中にみなぎる力をなかなか制御できなかったのだ。昨日から練習して今やっと、動かなければある程度隠せるようになった。まだまだ自分から近づくとすぐに気付かれてしまうので、待ち伏せでしか狩が出来ない状況だ。
困っちゃうよ、このままじゃ狩りだけで1日が終わってしまう・・・何とかしなきゃな
ただ今日は大物が取れたので、家に戻る。
飯を済ませると、昨日作ったかまどに焼入れをしながら鍛錬をする。
体から力を抜き自然体にしてみたり、丹田に力を集中して見たりして力の操作を試みた。
鍛錬をしながら、前々から欲しいと思っていた土器作りだ。
小学校のころ体験教室でやったのを思い出し、細長い紐を何本も作り積み上げて、鍋っぽいものを作る。今日は用途に合わせて、鍋、水がめ、どんぶりを作った。
これを陰干しした後、焼けば完成だ。これからは色々料理も作っていこう。




