青-05- 求聴君声
次から次へと降りかかってくる“やらなければいけないこと”たちは、予想以上に大量にあり、上手くさばくこともできず、最早キャパシティオーバーを起こしていた。
それはもう、言い訳にならないくらい忙しくて、彼女へ連絡ができなくなって気が付けば一か月が経ってしまった。
やっとの思いで一段落させた土曜の夜に、廊下にある電話台の前に立つ。
TRURURU………
受話器の向こうで、規則的な機械音が響く。
(……早く、出ろよ)
久々の電話で、緊張していた。
彼女の部屋には個人の電話が繋がっていて、彼女以外の家族とかが出る心配はなかったのだが。
(声、ききたい)
鳴り響く音につれて、心の中の想いが溢れそうだ。
しかし、いつまで経っても、この音が変わることは無かった。
留守電にも切り替わらない。
つまり、俺が連絡を入れたということが、彼女の元に何も残らないのだ。
「…………」
ガチャン、と、俺は静かに受話器を置いて、大きく溜息をついた。
もちろん、決まった約束をしていた訳ではない。
ただお互いにこの時間によく連絡をとっていたから、いつの間にかこのくらいの時間がなんとなく決まりのようになっていただけだ。
実際は彼女が出る保証など、どこにもないのに。
俺の連絡を、待ち望んでくれているのだろうと自惚れて。
声が聞けるものだと、勝手に思い込んでしまっていた。
思い込んでしまっていたからこそ、俺の中に生まれたこの思い。それに名前があるかなんて知らない。
ただ離れていることの、本当の恐怖を実感したこの時。
(―――会いたい)
だけど会えない。叶わない思い。
この時、俺は弱くて。自分のことで一杯いっぱいで、彼女を自分の支えにして、そして当然支えてくれるものなのだと思っていた。甘えていた。
こんな、ちっぽけなことで、弱く情けない俺は。
―――――君を想うのが、怖くなった。
携帯電話を、まだ高校生の子たちはあまりもっていない時代です。




