白-12- つかのまの
一度だけ、手紙を書いたことがあった。
それはまだ、彼からの連絡をひたむきに待っていた頃のこと。
近況とたわいもない話を、暑中見舞いの文字と共に。
忙しいってわかってた。だから連絡とれないのもわかってた。
だけど少しでも、こっちのこと、知ってて欲しいと思って。
遠くても繋がってるんだって、思いたかったから。
勿論返事は来なかった。
来る訳ないって思いながら、やっぱり寂しかった。
季節は巡って冬が来た。
智洋が居ない、久しぶりの、冬。
「おー、雪…」
静かな朝の空から、白が降ってくる。
いつもより少しだけ遅い、初雪だ。
「…だいぶ、積もってる」
夜のうちに降り積もったのだろう雪は、地面を白く覆う。そこには茶色とか緑とか、グレーも見えない。窓から見えるのは、どこまでも真っ白な世界。
誰が銀世界なんて言ったんだろう?こんなにも、白いのに。
雪が降れば、二人で外に飛び出してふざけあった。
約束なんてしてないのに、決まって共に過ごした時間。大好きな時間だった。
「どうしよっかなあ…」
外は雪。だけど彼はもう、此処にはいない。
「―――いってきまーす」
寝間着であるスウェットの上からジャンパーを羽織って、マフラーをぐるぐる首に巻いて。
完全装備で私は家を飛び出した。
しんしんと降り積もる雪の中、南の町にいる彼のことを思い出す。
「……逢いたいね」
誰に向かってでもなく、ぼそりと呟いた。
いつもは心の奥底に閉じ込めてた想いが、ひょっこり顔を出す。
雪は真っ白で、正直だから。
私も正直で、いたくなったみたい。
―――たまにはこんな日も、いいんじゃないかな。
こみあげてくる寂しさをおしこめて、空を見上げた。
サクリと、後ろから足音が聞こえた。
「やっぱりこんなとこにいた」
「…加奈美!どうしたのー!」
「冬瑚が一人で雪遊びしてんじゃないかなーて思って。」
「……え?」
「毎年聞かされてたもの。雪が降ったら智洋と雪合戦だーって。嬉しそうにね。」
「あは…」
(そうだっけ)
同じく幼い頃からの付き合いである加奈美には、耳にタコができるくらい話していたらしい。
「何、作ってたの?」
「ん、カマクラ。ミニサイズ。難しいんだよね。」
「雪だるまつくろうよ。私、頭ね」
「えーずるい!頭のがちっちゃいじゃんか加奈美。」
「早いもん勝ちー♪」
「もーっ」
おかしくて、笑った。
加奈美は優しいから。
私のために、来てくれたんだってことが、すごくうれしい。
きっと彼女がそばに居てくれたから、私は毎日笑っていられるんじゃないかな。
さりげなく、支えてくれている。
「…ありがとね」
「なんのことかな?それ!」
そっと呟いたら、照れ隠しのように、雪の塊が飛んできた。




