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チキンなオレ流高校生活!  作者: 仁瀬彩波
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生徒会の日常その5(前編)

まるで将棋だな

「我が覇道にこたえ、出でよ天馬ペガサス!!!!」

 黒田が駒台から桂馬を取り王手をかけてくる。

「クソっ!」

 ようやく勝ち筋が見えたって時に何て手打つんだこの中二病は!

 取り敢えず玉を下げて回避。

「無駄な足掻きだ…貴様の玉は次の一手で詰む!」

「なん…だと…?」

「ジ・エンドだ…!」

 いつぞやの藤堂先輩のように宣言し、駒台から歩を取り振り下ろす。

 避けようにも遠くから角が効いている。ここまでか。

「ん、これ黒田の負けやな」

「…生で見たのは初めてだな」

 上本と健人が横からそんな声を上げた。

「は?」

 どこからどう見ても黒田の歩によって詰まされたようにしか見えないのだが…?

 ん?

「あぁ打ち歩詰めか」

 俺も初めて見た。普通そういう負け方はしないしな。

 分からない人のために説明すると、最後に歩を打って詰ませると将棋では反則負けになる。

「なん…だと?」

 悔しがる黒田。

「よーしこれで俺の勝ち。ホットココアな」

「ブラックコーヒーで」

「オレンジジュース。もちろん果汁100%のやつやで」

「クソッ!行ってくる」

 生徒会室から黒田が出ていくのを確認。

 俺、上本、健人に負けた黒田は罰ゲームとしてパシリだ。


「普通に銀でも打てばいいのに黒田はアホやな」

 生徒会室の椅子に腰かけ、呆れたように上本は言った。

 金と銀と香、更に飛車まで持っていた黒田は冷静に考えれば負けるほうが難しい場面だった。

「今日という日付を踏まえて色々と思うところがあるんだろ」

 健人は将棋盤と駒を片付けながら言った。

 そう。今日というのは2月14日、あの日である、

「音坂さんのことが気になりすぎて打ち歩詰めって…」

 気持ちは分かるけども。


「それにしても皆遅くないか?」

 健人がそう思うのも無理はない。

 生徒会業務があるって藤堂先輩から連絡がきたから集まったものの、放課後生徒会室に全員が集まったと思えば女子陣はどこかに行ってしまった。

 仕方なく俺たちは暇つぶしとして罰ゲーム有の将棋大会を開いていた。

 ちなみに慎司はバイトがあるらしく帰った。まぁ慎司がいると誰も勝てなくなるし丁度いい。

「女子は女子なりに色々あるんやろ」

 上本は適当な返事をした。


 それから女子陣が戻ってきたのは一時間が過ぎた頃だった。

「待たせたな諸君」

 生徒会室のドアを開け、一番に入ってくる藤堂先輩はなぜかテンションが高かった。

「おかえりなさい月詠先輩…ってなんすかその格好」

 長らく待たされた上本のご機嫌は斜めだった。

「ん?見ての通りエプロンだが…慎司君はどうした」

 そこは裸エプロンだろJK

「生徒会男子対抗将棋大会を前に逃げたんですよ」

「ほうそれは残念だ。せっかく全員分のチョコを用意したというのに」

「マジですか!?くーださい」

 上本が一気にご機嫌になる。これがゴキゲン中飛車の力なのか…!うん関係ない。今日将棋ネタ多いな。

「いいだろう。慎司君の分は那月が食べていいぞ」

「やーりぃ!」

 楽しそうだな上本。

「健人、黒田ちょっと連れション行こうぜ」

 二人とも頷く。考えてる事は同じらしい。


「いや、やべぇだろ。上本は尊い犠牲になったんだ帰ろう」

 健人の顔に死相が見える。

「我も同感だ…会長殿の味覚に対応できる人などいないだろう…」

 あの人が誕生日プレゼントにブレアの午前6時を用意したことを誰も忘れてはいない。

「あの人も乙女だろ?そう…ワンチャンある!」

「諦めるがいい凌哉」

 クソが。

「…俺は別に帰っても問題ないんだけどな」

 健人が続ける。

「凌哉と黒田はそれぞれチョコを貰う相手がいるけどな、俺はいない」

 長い髪の間から虚空を見つめる死んだ目が覗いている。

「まぁ…その…気にするなよ」

「…俺はブラックチョコが好きなだけだ」

 何故か鼻で笑われたような気がした。




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