チキンな友達のチキンなデートagainその4
あれぇー…黒田ってどんな喋り方してたっけ…
「もしかしてあいつら急流滑りに乗る気か」
黒田と音坂さんの進行方向で苦い思い出が蘇る。
四者四様の絶叫。軽めのトラウマになってしまった。
「私としては乗ってもいいのだが」
「俺としても乗っていいんやけど」
「じゃあ2人が音坂さん黒田と乗って丁度4人ってことて」
二度と乗ってたまるか。
「ですって月詠先輩」
「らしいな那月後輩」
うぜぇ。
「俺は適当にご飯食べてるんで後は若い2人でごゆっくり」
「なら仕方ないな。行こう那月」
「はーい」
ほぼ身長同じの2人は異様なカップルの後をつけていった。
…。これは浮気にならないのだろうか。
結構並んでる人が多い。急流滑りがそこまで魅力的かどうか分からない。最後尾の見知った後ろ姿に距離を詰める。
「やぁ奇遇だな」
「つ、月詠さん!?」
ポンと月詠先輩が音坂さんの肩に手を置く。俺-上本那月もあたかもカップルのように振る舞い、月詠先輩が偶然を装い声をかけた。
「上本…貴様」
「そう怒んなって。折角のデートやねんから楽しまな損やで」
黒田を宥める。
「…凌哉はどこに行ったのだ」
「あいつは飯でも食ってんちゃう?急流滑りが怖いってさ」
「奴は高所恐怖症なのか?」
「らしいで。あいつの家は確かマンションの8階やのにな。慣れへんらしいわ」
「そういうものなのか」
他愛もない会話。
月詠先輩の方を見ても世間話に花を咲かせている。
「時に上本」
「ん?」
「貴様は会長殿のことをどう思っている」
「どうって…尊敬してるけど」
「そうではない。会長殿が貴様に向けている好意についてだ」
月詠先輩と音坂さんの世間話が止み、一時の静寂。
月詠先輩にも聞こえただろうな。
あー。なんて返そうかな。
「ストップだ永秀君。そもそも私は那月に対して好意を寄せてなどいない」
「会長殿はもっとまともな嘘はつけないのか。…傍から見たら上本はよくあるラノベのクズキャラだろう…我が一番嫌いなタイプだ」
合宿の時に告白させた癖に酷い言い様だ。まぁあれは罰ゲームだし仕方ないとして。
「那月はそんな男ではない!」
月詠先輩が声を荒らげる。
「私の我が儘に那月を付き合わせているだけだ…私への批判なら構わないが那月への批判は私が許さない」
「しかし…」
鋭い眼光を黒田に飛ばす。はぁ…音坂さんが困惑してるじゃないですか。
「落ち着け二人共」
おっとお前が言うな的な視線はやめてくれ。
「いやぁー実は優妃の奴がさ、月詠さんマジリスペクト!みたいなこと言ってるねん」
黒田から何言ってんだこいつ的な視線が突き刺さる。
「それでー月詠さんなら子作りまでなら何してもいい、みたいなこと言われててー。まぁ要するに月詠先輩と優妃のパイプ役頼むって感じやねんけどー」
一同絶句。
「そんな訳で優妃公認ってことで納得してくれへん?」
酷い屁理屈だ。自覚はある。まぁ
「あ、あぁそんな理由があったとは…済まなかった上本。貴様をクズ呼ばわりして」
他人を納得させる自信はあった。
「おう気にすんな」
屁理屈はクソだが役に立つ。




