チキンな友達のチキンなデートagainその1
俺-鳥山凌哉は眠れなかった。なぜなら明日デートだからだ。惚気けるなクソ野郎という罵声が聞こえるが俺ではない。明日は黒田がデートなのだ。三月に入り、若干温かくなってきたがまだまだ厚着が必要な程度の寒さの中のデート。
告白すると意気込んでいた黒田が逃げないように、俺と健人と上本と藤堂先輩で監視する。大松さんも来たがっていたのだが、用事があるらしく断念。可奈さんはバイトがある。
結局この前とメンバー大して変わらない。馬原の代わりに藤堂先輩が入っただけ。いや朝9時に例の遊園地というのも上本と同じだが。
「そろそろ寝ないと遅刻するな」
明日の用意を整え、眠りにつく。例にもよって一時間早く待ち合わせ場所に到着しなくては。
俺-上本那月は眠れなかった。なぜなら明日はデートだからだ。
というのは、真実のようで嘘だ。デートよりも、あの遊園地に行くことに対して緊張を覚える。色々やらかしたせいで、ちょっとトラウマだったりする。
それでも生徒会メンバー最強の厨二病-黒田永秀のデートは成功しても失敗しても面白そうだから何としても遅刻する訳にはいかない。
「あかん…寝られへん…」
もう夜中の3時になろうとしている。
ギリギリまで寝て、明日朝早く起きてコンビニで何か買おう。そう思い俺は頑張って寝ることにする。
我-黒田永秀は眠れなかった。雪ヶ崎市内の遊園地でデートというのは何とも言えないこそばゆさを感じる。明日は10000通りを超えるデートパターンから最も好感度を上げることの出来る最善策を取る。
「さぁ-我の戦争を始めよう…」
何か怒られるような気もするが気にしない。
私-音坂千尋は眠れなかった。明日は大好きな永秀とデート。アトラクションで楽しんだり、お喋りしたり。告白してくれるかな、なんて妄想をし出すと止まらない。
ついつい月詠さんに自慢しちゃった時は申し訳なくなったけど、半泣き笑顔でサポートするって言ってくれた時は嬉しかった。多分今も必死になって作戦とかを練ってくれてるんだと思うと月詠さんにも幸せになって欲しい。あーあ。上本君があと3人増えないかなぁ。
「ZZZ....」
藤堂月詠は眠っていた。
「クソ…!抜かった!」
俺-森重健人は後悔していた。
「やられた…」
体に力が入らない。やってしまった。薄れゆく意識の中で黒田のデートに行きたかったという思いが残り続けていた。




