全国大会を目指すチキンその4
「…ラァ!!」
相手のリターンがネットにかかる。見たか!初見殺しのスピンサーブ。若干の横回転を加え、スイートスポットに当てさせない。まずは1勝。ストレート勝ち。
「「ありがとうございました!」」
「「ありがとうございました」」
最後の握手って勝った方が結構強く握る気がする。
「…勝てた」
「滑り出しは好調やな」
このまま勝たせてくれると助かるんだが。
「健人くぅぅぅん!!!」
「うおっ!!」
「…ぐふっ」
焦った。巨乳の娘が健人にタックルを見舞った。最後に華麗なサーブを決めたのは俺なのに。おっと今ちょっとパンツが見えたような。
「那月ぃ!」
「まだ何もしてへん」
無実だ。
県大会なのにプレッシャーを感じずに戦えるのは心強い。2回戦、3回戦も危なげなく勝ち進み、次が4回戦。いわゆる鬼門というやつだ。
「うわー次で当たるんか」
「…避けては通れない道。やるしかない」
俺たちにとっての2回戦の相手は明応大附属高校の二年生ペア。私立高校は大体強いが明応は頭一つ抜けている。一個上の代が県内最強だったのだが…二年生ペアはどうだろうか。
「しゃーない。そろそろスピン本気出すわ」
「いけるか?」
「ボールもコートも慣れてきたし多分いけるやろ」
こっちには更に強力な武器みたいなのもある。そこまで恐れることもない。
「ここで勝てばみんなが応援に来るのか」
「らしいな」
そろそろ卒業式も終わっている頃だろう。この試合が終われば駆けつけてくるだろう。
「上本は…全国に行きたいか?」
「あったりまえよ。」
「だよな」
もう折り返し地点まで来た。貧乏公立高校の本気を見せてやろうじゃないか。
スピン攻めをするために、今回に限り俺がフォワ側でゲーム開始。残念ながらサーブを与えてしまったが、サーブ錬の感じからしてそこまで苦戦しなさそうだ。
「っしゃ締まってくぞ!」
「おう」
むぅ。盛り上がりに欠けるやつだ。
「健人くぅぅぅん!!!頑張ってぇぇぇ!!」
フェンスの向こうから皆美さんが叫んでる。あいつ今構えてるだけなんだが。
相手がトスを上げ、サーブを打つ。なんてことは無い早いだけのサーブ。
「…ラァ!」
思いっきりしたから擦り上げるように返す。
「…何やってんだ!」
俺のリターンはコートどころか、ダイレクトでフェンスに突き刺さった。




