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チキンなオレ流高校生活!  作者: 仁瀬彩波
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全国大会を目指すチキンその2

「お待たせ」

「おっ、来たか優妃」

「…おせーよ」

「遅刻はしてない」

 優妃を加えた俺達3人は7時に駅前集合としていた。試合会場まで電車で片道1時間。会場に9時までに着けばいいという点からしても余裕がある。

「なんか懐かしいね。この感じ」

 優妃の言うこの感じ、とは恐らく中学3年生の時に放課後3人で遊びまくってた時のことを指すのだろう。

「懐かしい、って1年しか経ってねぇよ」

「確かにな。時の流れを早く感じるのは若い証拠やで」

「褒められてるような気がしない…」

 褒めてないからな。

「じゃあ…行きますか」

 切符を購入し、改札口を抜ける。電車はすぐに来る。時間的にも曜日的にも人が少ないであろうと踏んでいた通りに客は少なかった。左側に健人、右側に優妃という並びで座り、目的地に着くのを待つ。椅子に座った途端に眠気に襲われ、意識を手放した。


「起きろ上本(バカ)

 健人に揺さぶられて起きた。

「おう…おはよ」

 いやぁー結構寝た。若干の睡眠不足だったのだが、スッキリした。

「朝飯食いに行くか」

「…あぁ」

「えっとその事なんだけど…」

 優妃の発言に対してクエスチョンマークを浮かべる俺と健人。

「朝ごはん作ってきちゃった」

 よく出来た彼女だ。優妃が差し出したバスケットの中にはサンドイッチが入っていた。いろとりどりとはまさにこの事!定番のカツサンドはもちろん、フルーツ系のサンドイッチに伊予柑が挟まれている!恐らく『いい予感』という意味が込められてるのでしょう!これはまさに験担ぎの大盤振る舞いだぁぁぁ!!


 駅から会場まではそれ程の距離も無く、優妃のペースに合わせて五分くらいで到着した。どうやらかなり早く来てしまったらしい。8時を少し過ぎたくらいに来る人は多くなく、チラホラとテントを立てたりして会場の運営にあたる生徒が見える程度。俺達は何となくそういった人から離れた会場の片隅に陣取り優妃の手作りサンドイッチに手を付けた。カツサンドが異様に美味いと思ったら、優妃のお父さんがA4ランクの高級フィレ肉を買い、優妃が調理したとか。あー早く結婚したいなー。

 冬の澄んだ空気と早朝特有の朝日により霜に濡れる人工芝のオムニコートの水滴が光って見え、とても幻想的だ。二月も今日でラスト。これから暖かくなるはずなんだがな。

「寒っ…」

 厚着をしてきている優妃だが、今日は思った以上に寒かったらしい。

「大丈夫か優妃。俺のウィンドブレーカー着る?」

「那月その中ユニフォーム来てるだけでしょ。試合前に体冷やしちゃダメだよ」

 返す言葉もない。仕方がない。別の方法を取ろう。

「…チッ」

 健人の舌打ちが聞こえる。何をするのか察したようで自販機行ってくる、というアイコンタクトを送ってきた。

「…優妃」

 俺は優妃を思いっきり抱きしめた。

「…!?」

 予想もしていなかったようで驚かれるが、拒絶はされない。普段なら他人の目が気になるところだが、クソ広い会場に片隅に陣取ったお陰で誰にも見られない。いやー女の子の体って柔らかいなー。

「どうしたの」

「いや優妃が寒いと思って」

「嘘…こんなに震えてる」

「あーバレたかー」

 優妃が寒がってるから抱きしめた…はずなんだけどなぁ。俺は寒いと思っていない。寒くはないが震えが止まらない。

「なんでやろな」

「緊張してるんでしょ」

「してなかったら俺化け物やでぇ」

「落ち着くまでこのままでいいよ」

 そう言って優妃は背中を撫でくれた。俺が背中を撫でられるのが好きだと知ってのことだろう。ほぼ出会いたての頃に1回だけ言った記憶があるが、覚えていたとは。優妃の匂いとか優妃の体温。こんな屋外で抱き合ってるってことに恥ずかしさを覚えつつも、俺から震えと不安は消えていた。

「サンキュー優妃。俺ちょっとウォーミングアップしてくる」

「うん。いってらっしゃい」

 少し名残惜しいが、優妃と体が離れる。平静を装っているが優妃の顔は真っ赤に染まっていた。可愛いやつだ。おっと。俺の顔面も真っ赤になっているらしい。優妃がめちゃくちゃニヤニヤしていた。可愛いやつだ。


「おっす健人。アップすんぞ」

「…藤宮の匂いがきついぞ」

 まぁバレるだろうな。

 1回戦シードの俺と健人は体を動かしたり駄弁ったりしながら、試合の時をゆっくりと待っていた。

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