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チキンなオレ流高校生活!  作者: 仁瀬彩波
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生徒会の日常

 二月に入り雪が降りそうなくらい寒い日が続く。県立雪ヶ崎高校の生徒会では学校の歴史を左右するような会議が行われていた。

「さて…この議題だが、生徒側に反対意見が出るとは到底思えない。教師との争いになることは間違いないだろう」

 いつにも増して深刻な表情で藤堂先輩が切り出した。

「先生達を納得させないとダメですよね」

 可奈さんの表情にも笑顔がない。

「お茶が入りましたー」

「ど、どうぞ」

 寒い日に温かいお茶はありがたい。生徒会でお茶を入れてくれるのは上本と大松さん。どちらもお茶を入れるのが上手い。

「ありがとう那月、京子。」

「ど、どういたしまして」

「You are welcome」

 上本が英語を発するだけでイラッときた。

「この件が教師に取ってもプラスになるようにすればいいんじゃないですか?」

「慎司君の言う通りだが、どうしてもデメリットしか思い浮かばない」

 ここまで苦戦する藤堂先輩を俺は初めて見た。

 意見箱に一つの紙切れが入っていた。生徒会では意見箱を設置し、生徒の意見を受け素晴らしい学校を作っていこうという活動を行ってきた。こんな真冬に一体何が…って思ったが、この真冬じゃないとこの件は取り入れられないだろう。即座に生徒会の会議の議題になったのだ。

「…切り札がないって訳じゃないですよね藤堂会長」

 健人が切り出した。それに対して藤堂先輩がため息をつきながら

「雪ヶ崎高校の評価を高く出来ればこの件は通るだろうな」

 雪ヶ崎高校の評価を高く?

「私が国立大学に進学して、な」

 なるほど。お世辞にも偏差値が高いとは言えないこの高校から国立大の合格者を出せば教師に取っても悪い話じゃなくなるのか。その話にこの件を通すことで藤堂先輩のモチベーションが上がる、とでも言えば納得させられるだろう。

「これは最終条件だ。私だって必ずしも合格するとも言えないからな」

 そこは誰も心配していないと思うが。この人が不合格になった時は他の受験者全員が模範解答を見ながら問題を解いたとしか思えない。

「明日の教師との話し合いは私と慎司君、那月で行う」

 は?

「藤堂先輩は上本贔屓し過ぎじゃないですか」

 いくら好きだからってこんな奴を大事な話し合いに連れていくのはどうなんだ。

「那月は屁理屈が生徒会メンバーで一番得意だ。正論が通らなければ那月の力が必要になる場面も来るだろう」

 あー。そう言われるとこのメンバー構成は妥当だな。


 残りの生徒会メンバーが会議室の前で待機する。

「月詠さん大丈夫かな…」

「藤堂先輩なら大丈夫だろ可奈さん。それより上本と慎司が不安だ」

「奴等はやる時はやる男…我は信じている…」

「だ、大丈夫かな本当に…」

「…大丈夫だ大松。最悪お前の力でゴリ押しすれば」

「そんな力ないよ!」

「…ぐへぇ」

 大松さんが健人を締め上げる。止めに入らねば。魔法の言葉

「それ以上いけない」

 重要な会議が行われている部屋の前で10分ほど騒いでいると…

「終わったぁー。死ぬほど疲れたんやけどー」

「我が全力を尽くせばこんなもんよ」

「それは永秀君のモノマネか?全然似てないぞ」

 戦いから3人が帰ってきた。

「藤堂先輩どうだったんですか?」

 俺は尋ねた。

「あぁ。私達の勝ちだ」

 最高の笑顔で応えてくれた。

 翌週、雪ヶ崎高校の食堂でアイスクリームが販売された。ゴミ問題などで雪ヶ崎高校にはアイスクリームが売られなかったが、藤堂先輩の代の生徒会で歴史は変えられた。

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