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チキンなオレ流高校生活!  作者: 仁瀬彩波
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合宿に行くチキンその17

 雪が降るんじゃないかってくらい外は寒かった。せっかくだから浴衣でも着てみるかーなんて辞めときゃよかった。せめてもの抵抗ということでネックウォーマーと手袋を身につけ指定の場所で待つ。自販機の光がやけに明るく感じた。ホットコーヒーが俺を誘惑するが俺はコーヒーが飲めない。暗い夜に1人とは心細いものだが、案外すぐに状況は打破された。

「ごめんね凌哉くん。待った?」

「いや、今来たところ」

 どこかで聞いたことのあるようなやり取りだが、事実を述べたまでだ。

「この前と同じだね」

「そうだな」

 真冬の夜に笑い合う男女。

「行こっか」

「どこに?」

「いいから!」

 可奈さんに手を引かれ歩き出す。手袋越しだが可奈さんの手は温かかった。


「本当に月詠さんのこと知らない?」

「どうしてそこまで食い下がる…」

「右上を見てたから…」

 脅迫に近いような笑顔。慎司はこの癖のことを可奈さんに話してないと言っていた。他人のことをよく見てる可奈さんだから癖を見抜かれたのか。部屋に戻ったら慎司に相談しよう。

「明日には元に戻ってると思う」

「どうして分かるの?」

「野郎の勘」

「何それ」

 ドン引きされると思ったが笑ってくれた。

「明日で合宿終わりだねー」

「合宿どころか一年も終わるけどな」

「あっという間だったよね」

「ほんとにな」

 雪ヶ崎高校に入学して遠足に行って野球大会に出て、生徒会に入ってテストを頑張って今の温泉に続く。中学の同期が多いこの学校で思い出なんてそこまで出来ないだろうと思っていたが本当に真逆というか一年があっという間に過ぎ去るとはな。

「ねぇ…凌哉くん」

「ん?」

 可奈さんが白い息を吐きながら俺のほうを見つめてくる。目を閉じ唇をこちらに向けてくる。とっさのことに体温やら何やらが急上昇していく。俺は可奈さんの肩を軽く掴み、頭を撫でた。

「暗いしそろそろ戻ろうぜ」

 何というか右上の方を見ている気がする。

「やっぱり凌哉くんだね」

 嬉しかったのか嫌だったのか複雑な表情を浮かべた可奈さんの二歩ほど先を歩き旅館に戻った。


「凌哉おかえり。逢い引きか?」

 部屋に戻った俺を真っ先に出迎えたのは慎司だった。

「ノーコメント」

 あそこで唇を近づけていたらどうなってたんだろ。良い方に変わるのか悪い方に変わるのか。どっちに転んでも俺は中学の時のトラウマに悩まされる。案外付き合わない程度の今の関係が一番幸せなのかも知れない。と、ここであることに気付く。

「あれ?黒田は?」

「さっき音坂とどこかに行ったとしか」

 なにぃ!?

「…それは本当か」

 健人もこのことを知らなかったようで上本とのオセロを放り出し、慎司に詰め寄る。

「本当だ」

 両手を上げ無抵抗アピールの慎司。

「…裏切り者は許さない」

 健人が戦闘モードに。

「えっ凌哉も黒田も逢い引きってこと?不潔!」

 このメンバーだと一番不潔であろう上本が喚く。

「うるさい!疲れた!寝る」

 自分の布団にヘッドスライディング。黒田狩りに出掛けた健人と上本を無視して俺は眠りついた。二泊三日の生徒会合宿はこんな感じで幕を閉じた。

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