合宿に行くチキンその15
「慎司君から大事な話があると聞いていたのだが…もしかして那月か?」
「あぁーまぁそっすね」
照れる上本キモチワルイ。
「ここでは言えない話か?」
「言えないけど言える話ですね」
「何だそれは…」
赤の他人からすればそうなる。
「俺も男なんで言いますけど」
上本の表情が真剣そのものに一変。そして俺たちもスマホを起動しカメラの用意をする。
「俺は凛々しい月詠先輩の事が好きです!付き合って下さい!」
「なっ…!」
赤面する藤堂先輩。女子かよ。
「いや…その…君には優妃がいるじゃないか」
「そんなの関係ありません!」
言い忘れていたが、俺たちの間での罰ゲームはほかの全員が認めるまで全力で行わなければならない。これを破ると本人に関するとんでもない情報が生徒会中にばらまかれる。一見クズに見える上本だが、あいつも公になるとヤバい問題を抱えているのだ。
「…返事は明日でいいか?」
「はい!」
俯いたまま藤堂先輩は去っていった。
「うわぁぁぁぁん!!やってもーた!!」
「…どんまい」
とんでもなくゲスい顔で肩を叩く健人。まぁサウナ耐久大会に敗けた奴に言い訳なんて出来ない。
「そろそろ飯行こーぜ」
そんなこともお構い無しって感じの慎司は既にこの一大イベントから晩飯モードに切り替わっていた。時間も六時半になろうとしていた。
「行くか」
若干重かった腰を上げ、広間に向かった。
「あれ凌哉くん?」
「あ、可奈さん」
俺1人だけ部屋に携帯を忘れ取りに戻ることになったのだが何という幸運。廊下で遭遇するとは。
「1人?」
「置いていかれた」
「なるほどね」
苦笑いで同情されてしまった。
「そういえば月詠さんが変だったんだけど男子の部屋で何かあった?」
「あの人は元から変でしょ」
素直に言っても良かったのだが、上本及び男子の名誉に関わる。
「そんなことないよ」
「なくはないだろ」
「変わってる人だけど変じゃないよー」
うーん。上本あたりが好きそうな会話。言葉遊びみたいな。
「この話は辞めにしよう」
「わかった…」
納得のいかない感がすごい表情の可奈さん。悪いが俺にも譲れないことがある。
「ねぇ凌哉くん。今日の夜…10時くらいに2人でどこか行かない?」
思いもよらない誘いに俺は戸惑いを隠せなかった。
「おぉ来たかお二人さん」
「悪いな慎司、お待たせ」
可奈さんと広間に行くと他のメンバーが揃っていた。
「なぁ慎司夕方に言ってた楽しみにしとけって一体」
気になっていた質問をぶつけた。
「あぁそのことか。今日の晩御飯寿司食べ放題」
「えぇ…」
魚介類食べられない系の人間にとっては地獄じゃないか…。高級旅館でコーンの軍艦を強要した俺と上本は無粋等と批判受けつつ地獄を乗り切った。




