番外編 チキンのクリスマス
小学生の頃にクリスマスプレゼントでゲーム機を買ってもらい、大喜びした事を今でも覚えている。その次の年に徹夜でゲームをしていたら風呂上がりの父が新しいゲームソフトを持ってリビングを彷徨いているところを見てしまい、現実というのを知った。それはそれとしても俺はクリスマスというのは新しいおもちゃを買ってもらえる上に、ケーキまで食べられる。お年玉がもらえる正月と一二を争うくらい好きな一日だった。そんなクリスマスがリア充を恨むだけの日に変わるなんて時の流れは残酷だ。
「リア充は外!」
「非リアは内!」
俺と健人は市内で反リア充活動に精を出していた。聖なる日に精を出す、まるで今日のリア充達のようだ。実は俺たちもリア充なのでは?
「よしこの辺のリア充も少なくなってきたな」
「…あぁ完璧だ」
イルミネーションにより幻想的に忌々しく彩られたこの街に2人の孤高の戦士って感じだ。なんかちょっと黒田っぽい。その黒田は、と言うと音坂さんと遊ぶとかでキャンセルを食らった。かれこれ一ヶ月以上も前に交わされた絶対の契を女子と遊ぶなどという理由で断ってきたことだし、生徒会メンバーによる初詣の時に何かしらの裁きをくださねばならない。
「とりあえず次どこ行く?」
「ラ○ホ街なんてどうだ」
「ダメだ!俺たちには刺激が強い!」
「…クッ…どうすれば」
愛宿屋は遠い上にDTにはまだ来るのは早い、と言わんばかりの光を放っている。
「…いいことを思いついた。」
「ほう。何かね」
「確実にリア充がいる場所に乗り込もうじゃないか」
「流石だ健人。やはり君は天才だ」
「そう煽てたって財布には福沢諭吉先生が一人いるだけだぜ?」
「充分過ぎる」
ということでリア充のいる場所に目星が付いているらしい健人に動向し、活動を盛り上げることに。
クソ寒い中自転車であるマンションまで来た。エレベーターに乗り、11のボタンを押す。僅かなGを受けエレベーターは上を目指す。ドアが開くと一気に冷たい風が流れてくる。若干震えながらマンションの廊下を歩き、目的の部屋を見つける。
「うーえーもーとーくーん!!!!」
インターホン連打担当の健人と声掛け担当の俺による見事なコンビネーション。ちなみに上本のご両親は今日仕事で帰ってこないらしい。
「うるさいなー。何よ」
「ノコノコと出てきやがったなリア充が!非リアが成敗してくれるわ。」
「健人は何と戦ってんねん」
そらもう世間よ。
「…とりあえず寒いから入っていいか?」
「なんでやねん!」
出た王道ツッコミ。
「中に誰かいたりする?」
「優妃おるで」
クソが。
「那月。誰か来てるのー…ってあぁなるほど」
ある程度の予想ができていたかのような藤宮さんの反応。
「…おう非リアが来たぞ」
「ちょうど良かった遊ぼうよ」
疑問符を浮かべる俺と健人。
「いや優妃が調子乗ってクソでかいケーキ買ってきたねん」
「あれは作ったの」
頬を膨らませる藤宮さんに対してはいはいと上本が頭を撫でる。
「とりあえず上がりや」
そして今年のクリスマスは中学の同期で楽しく過ごした。ケーキは美味かったが俺もあれくらいなら作れるな、と思った。




