合宿に行くチキンその13
「すごい絶景だね!」
金鱗湖に着き、可奈さんがはしゃぐ。この季節は空気が澄んでいて確かに絶景だ。
「那月…また春に来ようね」
「おう!」
そう言い少し離れたところに行きやがった。はぁ…。リア充が絶景の邪魔をする。
「そう暗い顔をするな凌哉君。君には可奈がいるじゃないか」
「ははは。そんなんじゃないっすよ」
「そうですよ月詠さん。凌哉くんには私よりいい人がいっぱいいますよ」
「そうか?私にはお似合いだと思うぞ」
「もー。そういう月詠さんはどうなんですか?」
「あ、俺も気になる。どうなんですか?」
「告白はされるが…残念ながら何かで私に勝る男はいないらしい」
やれやれと言った具合に自慢してくる。
「藤堂先輩は完璧人間ですからねー。」
「そう持ち上げてくれるな凌哉君。私程度の女ならそこら中にいるさ」
「藤堂先輩みたいな人がそこら中にいたら大変なことになりますよ」
「ほう。那月みたいなことを言うな」
「あっ、上本くんなんてどうですか?昨日卓球で勝ったじゃないですか」
「那月か…優妃がいなければ考えなくもなかったな」
「でも上本はあの卓球だからこそ勝てたようなもんじゃないですか?」
「那月はあの卓球以外でも私に勝っている」
「上本がですか?一体何で」
「オセロだよ。5戦全敗だった」
なんという事実。確かにオセロが強いと聞いたことがあるが、ここまでとは。
「那月には私が何を考えてるか把握されているようで何とも言えない」
「それって恋じゃないですか!?」
可奈さんが目をキラキラさせて問う。やはり女子高生は甘いものと恋が好きなんだな、と思わされる。
「かもな」
苦笑いを浮かべる藤堂先輩。そして続けた
「ただ、優妃の目の黒いうちは他の男を探すとするよ」
そう言った藤堂先輩は最高の笑顔を見せた。
「よぉ慎司4時間ぶりだな」
「おぉ凌哉4時間ぶり」
旅館に戻ると玄関に慎司がいた。あれから俺たちは金鱗湖ではしゃいでから、温泉巡りやらお土産探しで5時まで盛り上がった。
「慎司、他のメンバーは?」
「もう部屋に戻ったけど。そっちは?」
「まだ買うものがあるって俺だけが戻ってきた」
「悲しいな」
「うるせぇ」
人を馬鹿にするような笑いをやめろ。
「女将さんから聞いたんだけど今日の晩御飯凄いらしいから腹空かせとけ」
「おっ、マジか。楽しみにしておこう」
スリッパに履き替え、全力で階段を駆け上がった。
クソ広い部屋で男2人だけ。健人と黒田が小さく見えてしまう。ひっそりと上本が持ってきたオセロをしている、というのも影響しているんだろうが。
「生徒会の騎士様が帰還したぞい」
「む…凌哉よそれを我以外が使うことは許されない」
「…おかえり凌哉」
「おう健人」
慎司と上本はとうぶん帰ってこなさそうだ。
「…なぁ凌哉。金鱗湖で何かあったか?」
「藤堂先輩に関する新事実を聞いてしまう程度なら」
「気になる教えてくれ」
オセロを放ってまで気になるのか。別にこの話に俺は全く関係ない。教えることに対して抵抗もない。仕方が無い教えてあげよう。俺はコーラ1本で今日起きたことを教えてあげた。




