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チキンなオレ流高校生活!  作者: 仁瀬彩波
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合宿に行くチキンその10

「月詠先輩いつもオモチャにされてた分今日は俺がオモチャにしてあげますよ!」

「言うようになったな那月」

 とラリーをしながら会話する2人、上本那月(うえもとなつき)と生徒会長の藤堂月詠(とうどうつくよみ)先輩の雌雄を決する瞬間が近い。上本が勝てば混浴という大一番。ここまで二勝二敗。何としても勝ってもらうしかない。

 ジャンケンで藤堂先輩サーブに決定。藤堂先輩が集中力を高めるように掌にボールを転がす。

「あ、月詠先輩ちょっとタイムいいっすか」

「ん、あぁいいぞ」

 上本はそういい今着ている長袖のTシャツを脱ぐ。

「あれはうちが去年の誕生日にあげたやつ…」

 藤宮さんが呟く。上本は中に着ていたテニス用のウェアを披露した。黒を基調としていて袖のところがライトグリーンだ。上本の好きな色がライトグリーンだと把握していた藤宮さんの選んだんだろう。

「すみませんお待たせしました」

「おう」

 藤堂先輩がサーブを打ち、ゲームがスタート。健人に負けた上本だがスタミナの差がなければ間違いなく勝っていたのは上本だろう。

 試合の展開は藤堂先輩が攻め、上本が受けといったところ。元々上本はツッツキで粘るタイプなのだが、何というか普段の二人の関係が表れているような気がする。一方的に攻め続けてる藤堂先輩にミスがないとなると上本の集中力に全てがかかっている。前後左右に完璧なコントロールで打ち分けてくる藤堂先輩に対して基本ツッツキ時々ドライブの上本は思うように点が伸ばせない。3-6とリードされてなお攻められ続けている。

「はっ!」

「クッ…!」

 点を取られ3-7。厳しい戦いが続く。

「月詠先輩タイムお願いします」

「わかった」

 上本はメガネを取りタオルで汗を拭きこちらに来た。

「いやぁ月詠先輩強いわ。打つ瞬間までどっちに打つか分からんもん」

 息を切らしながら苦笑いで言ってきた。

「…上本もっと攻めろ」

「そうしたいんやけどな。甘い球が来おへんからさ」

「…サーブレシーブからドライブで深く狙っていけ。それがエッジボールになったら御の字だ」

「なるほどなぁ。狙ってみるわ」

「行ってこい」

 俺は上本の背中を押した。


 とてつもない乱打戦になった。両者上回転のドライブを多用し、コートから三歩ほど下がってのラリーを繰り広げている。健人からのアドバイスで上本は攻めの姿勢を続けている。

「チッ…」

「すみません…」

 これで2回目のエッジボール。正直俺が相手ならブチ切れていただろうが、流石藤堂先輩心が広い。カウント10-10で並んでデュースになった。サーブが上がると即座にドライブ合戦が始まる。藤堂先輩の打つ瞬間までどちらに打つか分からないボールに対してフォアと反射神経で対処しているという状態だ。左右に振る藤堂先輩と徹底して深く打つ上本の対決。ここでアドバンテージを取れば一気に流れは傾く。そんなポイントを迎えている。またもドライブが来る。上本が深く返すそして。

「なっ…」

 突然のツッツキ。上本は一瞬の隙を突かれた。ボールはネットを超えない。

「流石っすね」

「まぁな」

 二人とも息を切らしている。それだけを言い試合が再開される。冬なのにすごい熱気を放っている。いつものドライブ合戦。いつもと違うところがあるとすれば、上本が点を取られると負けるというところだ。フォア側に強く打たれ続ける。そして

「ハッ…!」

 突然のバックへの強打。上本の足は完全にフォア側に行ってしまっている。手を伸ばしてバックで対処しに行くが…届くかどうか。

「ウラァ…!!」

 手首を曲げ払うように返すが、ドライブ合戦でのボールとはかけ離れた威力。緩やかなボールは決めにかかる藤堂先輩にとって最高に打ちやすいところに落ちる。決められてしまう。しかしその瞬間

「なに…!?」

 ボールが急に曲がり対処しきれなかった藤堂先輩のボールはネットを超えない。

「健人、あれは一体」

「…恐らくだがチキータだろ。偶然にしては出来すぎていると思うが」

 わざと狙っていたということなのか。それにしてもあの上本のドヤ顔は殴りたくなる。

「まだまだこんなもんじゃないっすよ月詠先輩」

「来い那月!」

 激しいドライブ合戦が再開された。


「勝った…のか?」

 上本の放った渾身のドライブは藤堂先輩のアウトを誘った。

「やっと終わったぁ」

 上本はその場に大の字で倒れる。

「よくやった上本(バカ)!」

 健人が一目散に上本の上にのしかかりに行った。

「完敗だよ那月。君は最高の男だ」

「ありがとうございます月詠先輩」

 藤堂先輩が上本に歩み寄り握手を交わす。浴衣で卓球だなんて冷静に考えれば藤堂先輩はおかしい。15-13で上本の勝利。これで混浴に行ける。

「明日の10時に今日の混浴に来たまえ」

 藤堂先輩の言葉に勝ちという実感が湧いてくる。いやぁー楽しみだ。


 次の日に慎司以外のメンバーで混浴に行ったのだがババァしかいなかった。帰ってから藤堂先輩に聞くと別に私達が行くとは言っていない、と返された。人間不信になりそうだ。


森重健人11-1藤宮優妃

今川慎司7-11音坂千尋

鳥山凌哉4-11大松京子

黒田永秀12-10小暮可奈

上本那月15-13藤堂月詠

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