合宿に行くチキンその4
健人から顔中に落書きをされた慎司はトイレで顔の皮膚が削れるまで洗い油性ペンの攻略に成功。それはそうと、もうすぐ昼になる。一部メンバーはコンビニで昼ご飯を買い、一部メンバーはお店に入っていった。バスまで30分以上時間があるため、各自暇を潰すことになった。ちなみに俺はコンビニで昼ご飯を買った。ツナマヨ2つと和風ツナマヨとフライドチキン、黄金コンビである。しかし初めて来た大分空港を可奈さんと2人で回れてテンションが上がった。そうこうしていると、あっという間に時間は過ぎていきバスに乗る時間がやってきた。俺と可奈さんがバス乗り場に着く頃には皆揃っていた。
「おせーよ何してたんだ?」
落書きから解放された慎司がここぞとばかりに聞いてくる。
「ちょっと買うものがあっただけだ。何も起きなかったよ」
つまんねー、と慎司はそう言い、バスに乗り込む。藤堂先輩、大松さん、音坂さん、上本、藤宮さん、健人、黒田と乗り込みいよいよ俺たちの番だ。ここはレディーファーストの精神で可奈さんを先に乗ってもらい、最後に俺が乗り込んだ。俺は後から2番目の窓側の席だ。ちなみに隣は黒田。音坂さんじゃなくて悪かったな。
1時間という短いのか長いのか分からない時間を俺は寝続けた。バス酔いするタイプなので景色を見るか寝るかで迷ったが、どうせ今日は徹夜だろうという結論に至り眠りについたのだった。ちなみに黒田はずっと起きていたらしい。1人でビターチョコを食べる黒田を想像すると、なかなかにシュールだ。
バスから降り、人生初の湯布院の地を踏む。おっ、何か黒田っぽい。降りてからそこそこ歩いた距離にその旅館はあった。女将さんに連れられ部屋に行くとなんと30畳以上はありそうな和室の空間が広がっていた。
「…景色も凄いな」
健人が呟き窓を見ると景色も凄い。確かに俺は藤宮さんから高級旅館とは聞いていたが一般庶民の妄想力にも限界というものがある。5人とはいえこの広さとこの豪華さは落ち着かない。もうなんか本当にこの部屋に泊まっていいのか分からなくなってきた。
「さて、時間は3時を過ぎたところ…か。どうする?」
「覇道の補給」
「盗撮!」
「…足湯」
「露天風呂」
意見が割れてしまった。こういう温泉に来るということは露天風呂を楽しむのが常識じゃろがい。
「とりあえず上本の意見は却下な。会長がいる時点で無理ゲーだ」
慎司は別に女体には興味がないらしい。
「結構歩き回ったし健人の意見を採用して足湯にするか」
黒田と俺が頷き立ち上がる。ポケットに財布と携帯を入れ、俺たち生徒会男子陣は旅館を出た。




