合宿に行くチキンその3
「起きろ凌哉」
俺は隣の席の上本に揺さぶられ起きた。起こしてきたが窓の外を見ると雲の上。まだ着いた訳では無さそうだ。
「ほらお前の分のジュース貰っといたで。コーラでよかったやろ?」
「おぉ、サンキュー」
上本からコーラを受け取り、飲む。やはり美味しい。
「上本はそれ何飲んでんの?」
「オレンジジュース」
そういえばこいつ炭酸飲めなかったな。ただでさえ顔面で人生損してるのに更に炭酸が飲めないなんて俺なら生きていくのに絶望して」
「いや声に出てるし別に炭酸飲めんくても困らんし俺には優妃がおるから何も絶望する事なんてないし」
「嬉しい那月」
イチャつく上本と藤宮さん。クッソー。もういい寝よう機内の時計を見たところあと1時間くらいで着くらしい。軽めに寝たせいで眠気は吹っ飛んだ。どうにかして暇を潰さないと暇で死んでしまう。横に目をやると上本と藤宮さんがイチャイチャしている。更に奥に目をやるとぐっすり眠っている音坂さんに対してソワソワしている黒田。この黒田は見ているだけで確かに面白いのだが、すぐに飽きる。もう少しだけ頑張って寝てみるか。
この俺-今川慎司は一瞬たりとも油断が許されない状況にあった。凌哉に頼まれていたラノベを渡してから寝ようと思っていたんだが、チラッとあれが見えたんですよねー。健人の手に油性ペンが。ちょっと読んだだけで寝やがった絶好のカモが後ろにいるんだからそっちを狙えよと思う。俺だったらそっちを狙う。
「なぁ健人ちょっとペン貸してくれ」
「…何に使う」
「さっき機内に芸能人がいたからサインを貰いに行こうかと」
「ホントだろうな?」
「俺は嘘はつかない」
「…仕方が無い貸してやろう」
「あざーす」
健人からペンを受け取り座席を立つ。そして俺は自然な流れでトイレに向かった。さて、これをどうするか。トイレにぶち込むのも気が引けるしなぁ。やはりポケットに入れておくか。健人には適当な言い訳でペンをなくしたとでも言えばいい。これで心置き無く寝られる。思わず笑みがこぼれる。軽めに揺れる機内を上機嫌で歩く俺。席に戻ると小暮は寝ていたが健人は起きていた。健人が寝ていれば何の問題もなかったんだけども、まぁいい。
「…遅かったな慎司。サインは?」
「あー。えーとよく見たら人違いだった。ついでだったからその人にペンをプレゼントしてきたぜ」
思いっきりドヤ顔で言ってやった。
よし寝よう。おやすみ。
「おい凌哉起きろ着いたで」
「んぁ…」
眼をこすり窓の外を見る。おぉ地上だ。
俺-鳥山凌哉は本気で寝てしまっていたらしい。シートベルトを外し、立ち上がる。
「ほらよ」
「サンクス」
俺は上本から荷物を受け取り出られる準備をする。後ろから降りる客が押し寄せる。事前に藤堂先輩からは、ほかの客を優先してから下りろと言われていたので待つ。あの人に逆らうなんて命がいくつあっても足りない。
「慎司何その顔!いや案外似合ってんで…プッ」
上本の笑う声が聞こえ俺も慎司の顔を見る。
「目が…三つある…」
笑いを堪えながら指摘した。額にもう一つの目が描かれていた。
「け、ん、と〜!!!!」
「…俺に寝顔を見せた。それが慎司の敗因だ」
キリッとそう言う健人だったが、この後藤堂先輩からめちゃくちゃ怒られたのだった。




