合宿に行くチキンその1
俺-鳥山凌哉は眠かった。なぜなら緊張の余り昨夜はほとんど寝ることが出来なかったからだ。そしてスマホの画面は7:30を表示していた。さて、どうやって暇を潰すか。
未明に起きてしまい家にいても寝落ちの危機しかなかった為早かったが家を出ることを選んだ。藤堂先輩が一階の到着ロビーに九時集合だと言われ張り切って来てしまった。さぁどうする。他に誰かが来ている気配はない。普段なら迷わずゲームなのだが、今日は九時までメンテナンスなのだ。そしてこの絵面は頂けない。合宿でテンションを上げ集合時間の一時間半も前に着いてしまってる感じになっている。アホくさいというか馬鹿ガキというか。もういっそ次に誰かが来るまで他の場所に移動して待ち伏せしようか。いやダメだ。リュックサック+ボストンバッグに詰め込まれた大量の荷物が俺が動くのを許さない。いっそ知的アピールの為に本でも読むとか。いやダメだ今日はラノベしか持ってきていない。考えろ…考えるんだ俺!
これこれ30分くらい悩み続けていると、ようやくここで生徒会メンバーの1人を見つけた。
「あれ凌哉くん早いね。もしかして待った?」
そう生徒会メンバー1の美貌を持つ小暮可奈だ。
「いやいや今来たとこ」
「えーほんとに?」
「ほんとだってば」
なんかこの会話前にもしたような気がする。服を褒めればいいのかってあれ。そういえば可奈さんが今着ている服…
「その服ひょっとして買い物に行った時と同じ服?」
「凄い!よくわかったね。まさか気付かれるとは思わなかったよ」
「たまたま覚えてただけだよ。それより何でまたその服?」
「それは…その…凌哉くんが可愛いって言ってくれたから…」
可奈さんの発言に対して俺の体温が急に上昇していくのが分かる。
「それより凌哉くん。ほんとに今来たところなの?」
「どうしてまた聞くんだよ。ほんとだってば」
「凌哉くんって嘘つく時に右上の方に視線が行くよね?」
なぜバレたし…。まさか慎司の奴がチクったのか。あいつかき氷機を買ってやった恩を忘れたのか。可奈さんはいい人だが時々何を考えてるか分からない時がある。この癖を広められるわけにもいかない。よし…
「その癖を知られてしまうとは…要求を言え。靴でも何でも舐めてやるよチクショー!」
見事な土下座を決め込んだ。嘘がつけないなんて人狼ゲーム最弱になるじゃないか。
「え、えっとごめんね?この癖のこと誰に言わないから!」
「いやまぁ何というかそんなガチで謝られるようなことでもないんだけど。言いふらさないならそれで…」
「そ、そう?じゃあこの事はなかったことに…」
「そうしてくれると助かる…」
「うん…」
早朝から結構な精神的ダメージを受けてしまった。二人で話していたいが、気まずくなってしまった。こんな時に限って他に誰も来ないなんて勘弁してくれ。そうだこんな時こそ慎司が来そうなものなのに。あいつはいつも待ち合わせ時間よりかなり早くに来ているはずだ。もしかしたら今この空港内にいるのかもしれない。早く出てきてくれ…。
「ねぇ凌哉くんあのね。この合宿が終わったら、また2人で遊びに…」
「呼ばれた気がしたので今川慎司到着!」
可奈さんの言葉を遮り、史上最悪のタイミングで副会長の今川慎司は到着した。




