合宿の準備をするチキンその1
冬真っ只中な今日、俺-鳥山凌哉は電車を乗り継ぎ、わざわざ東京へと向かっていた。憂鬱だ。期末テストが終わり冬休みへと突入した今日、12月20日は平日だった。クリスマスを目前に控え賑わう街にチキンが何の用かと問われれば、合宿用に色々と新しく買いたい物が多かったからだと答える。それでも雪ヶ崎市でも揃うのではと問われれば、確かにと答える。でもなー。都会じゃないと買えないものとかがあったりしなくもないのだ。買えないものというか何というか。目的地まで残り二駅。珍しくオシャレな感じの服を着て都会の勢いに負けないようにしてきた。何故かと問われればそういう気分としか言えないだろう。
5分前行動は基本中の基本。こういった日に限って寝坊する確率が高い俺は寝るのすら怖かったが、寝ないと何も出来ない。ビビりながら寝たのだが、それでも寝坊しなかったということは案外俺は幸運なのかもな。
目的地には着いた。時間も遅刻じゃない。さて、この人混みの中にいるのだろうが、探せるかどうか。
「凌哉くーん!」
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえ振り返ると、背伸びしながら手を振る小暮可奈の姿が見えた。そして駆け寄り無事合流。思ったより時間はかからなかった。
「ごめんね凌哉くん。待った?」
「いや、今来たところ」
テンプレートな返しだが、事実だ。
「ホントかなー?あと他に言うことないの?」
上目遣いで尋ねる可奈さんは本当に可愛い。
「ホントだって。あ、今日の服可愛いな」
実際は服だけじゃないんだけどな。
「よく出来ました。じゃ、行こっか」
歩き出した俺と可奈さん。こうして2人で買い物に行くことになったのは、終業式の日に何気ないありふれた会話でお互いに合宿の準備が終わっていなかったことが判明したからだ。せっかくだから、と現地集合で。
席替えが行われてから連絡先を交換したりよく話すようにもなった。時々だが、こうして2人で遊びに出掛けたりもした。やはりあの時の席替えは高校生活を左右すると言っても過言ではなかった。
「今日可奈さんは何を買うの?」
「んー。タオルと部屋着、あとお菓子!。凌哉くんは?」
「俺もお菓子、あとモバイルバッテリーとかかな」
「じゃあ家電量販店にも寄らないとだね。あ、そうだ」
ハテナマークを浮かべる俺に対して満面の笑みを浮かべて彼女は言った。
「今日はよろしくね!」




