テスト勉強に明け暮れるチキンその4
うーん…。肩がこった。生徒会室の時計を見るともうすぐ6時。そろそろ終わりか。
スマホを弄っていた藤堂先輩が立ち上がり授業の終りを知らせる。そしてメンバー全員で塾の講師に挨拶をし、今日は解散となった。俺も帰る準備をしていた。そんな時
「鳥山君行こっか」
軽めに驚く俺の腕を小暮さんに引かれる。駐輪場まで駆け足で向かった。自転車に跨り、小暮さんの漕ぐ自転車に着いていく。少しいい香りのする風を浴び俺の鼓動が早まる。
「星が綺麗だね」
儚げな表情で彼女は言った。都会と田舎を足して2で割ったようなこの街の空に星が見えていた。君の方が綺麗だよ、なんてセリフはチキンな俺に言えるはずもなく、「そうだね」と相槌を打つことしか出来なかった。
「着いたよ」
目の前には住宅街の一軒家。あっという間に着いたような感覚だったがスマホを見ると15分ほど経っていた。
小暮さんに促され、家の中に入ると暗く、他に誰かがいるように思えなかった。
「私の部屋二階の奥だから先に入ってて。私お茶取ってくる」
「わかった。」
別に女子の家に上がるのは初めてという訳でもないのに、妙な緊張感。元カノの家に行った時には感じなかったのに。
「失礼しまーす…」
呟きそろーっとドアを開ける。階段を上がり部屋に入り、明かりをつけるとピンクを基調とした何というかザ・女子高生って感じの部屋がそこにはあった。
「あ、適当に座っていいよ。」
小暮さんからクッションを受け取り、カーペットの敷かれた床に座る。めちゃくちゃいい匂いがする。匂いフェチの俺を満足させるのに十分だった。
「それじゃあ始めよっか」
そう言い彼女は折りたたみのテーブルを出した。あれあれ。
「えっと…小暮さん。今日俺を家に呼んだのって…」
「勉強するためだよ?」
デスヨネー。いや疚しい気持ちなどなかった。断じてなかった。でも少し謎の期待が無かったとも言えない。女子の家に上がるのに期待しない方がかえって失礼だと思う。
それから俺はこの土日を生徒会室で勉強してから小暮さんの家で勉強していた。本当に何も起きなかった。




