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チキンなオレ流高校生活!  作者: 仁瀬彩波
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朝飯を食らうチキン

ちょっとした番外編

 テストまで残り3日。


 俺-鳥山凌哉(とりやまりょうや)は朝6時に珍しく早く起きた。実際は眠れなかったという表現が正しいのだが。3時間後に生徒会室で塾の講師による授業を受けることになっている。3時間もする事が無いという現実。昨日が給料日で少し財布に余裕が出来ている。今日は朝から外食と行こうか。


 大した都会でなく特に朝から美味しいものを食べられる店というのは、この街-雪ヶ崎市では限られていた。冬間近のこの街は風が冷たく、厚着をする必要がある。俺は普段より一枚多く着て街を歩く。さて何を食べようか。


 俺-上本那月(うえもとなつき)は眠かった。しかし幼馴染みであり、彼女の藤宮優妃(ふじみやゆうひ)による早朝の来襲により起きざるを得なかった。昨日も月詠先輩(つくよみせんぱい)に夜遅くまで勉強させられ、疲労によりじっくり長く眠りたかった俺の都合はお構いなしに優妃は朝ごはんを一緒に食べに行こうと言ってくる。俺自身腹が減っていたこともあり、これに応じない理由もない。時計を見ると時刻は6時。やれやれ朝から空いている店を見つけるところから始まるようだ。俺はお気に入りのパーカーを着て、優妃の待つリビングへと向かうことにした。


 もうすぐ12月になろうとしている。街に吹く風は冷たい。優妃はマフラーを身につけ防寒対策は完璧だった。そして優妃は長く余ったマフラーの部分を俺に差し出してきた。

「身長差がそろそろ20センチになりそうやねんけど」

「多分足りると…思う」

「はいはいお姫様の仰せのままに」

 俺はいつもよりも前かがみになり、優妃は俺の首にマフラーを巻いた。暖かいが何というか…恥ずかしい。


 あまり値段も高くなく温まるものを食べたかった。家から少し歩いたところにある商店街に辿り着いた、俺-鳥山凌哉は空いている店がないか見て回ることにした。今の時代、24時間営業の飲食店だって少なくない。だが今日という日は行ったことのない店にしようと思った。時間だけはたっぷりある。じっくり探そうじゃないか。不況のあおりを受け、商店街で空いている店は少なかった。

 しかし、「カレー屋か…」

 空いている店を一つ見つけてしまった。丁度いい今日はタフな日になるだろう。朝からガッツリいこうじゃないか。俺はこの店にする事にした。

 古びた店の中に入るとどうやら先客がいるらしい。しかもカップルで。若干の羨ましさがあるが、朝飯くらい1人で食べてもいいという思考にたどり着き俺は少し離れた席についた。

「いらっしゃいこれがメニューね。決まったら呼んでね」

 店の主人は優しそうだ。冷たい水を少し飲み、俺はメニューを見た。ふむ…普通のビーフカレーにチキンカレーにシーフードまで。値段もお手頃でますます悩む。トッピングの種類も豊富だ。カツやソーセージ、チーズ、餃子まであるのか。悩ませる。

「すみませーんビーフカレーとチキンカレー大盛りにトッピングでソーセージと餃子とフライドポテトで」

「あいよ!」

 店主の威勢のいい声が響く。というか朝からなんて量を食べるんだ。思わず俺はその声の主に振り返った。そして

「な…上本と藤宮さん…」

「え、凌哉!?」

「おぉー」

 驚く俺と上本と驚かない藤宮さん。なんて事だ朝から一人でガッツリいこうとしたら上本夫妻に出会うとは。というかそれよりも…

「おい上本。お前朝から食べ過ぎ」

「いいやん別に。いつもこんなもんやで」

「食べても太らない那月が羨ましい…」

 可哀想な藤宮さん。気持ちは分からないでもない。食いまくってガリガリとか食った飯はどこに消えてるのか。雪ヶ崎高校七不思議の一つに入るレベルの謎だ。

 厨房の方から美味しそうな匂いが漂う。上本達が注文したカレーを作っているのだろう。俺も早く頼んでしまおう。

「すみません。チキンカレーに厚切りベーコントッピングで」

「あいよ!」

 素のチキンカレーでも良かったが、ガッツリいくと決めた俺はベーコンをトッピングした。チキンだけにチキンカレー。なかなか洒落てるぜ。

「はいビーフカレーとチキンカレー大盛りにソーセージと餃子とポテトトッピングね」

 上本達の席に運ばれたカレーを見て驚いた。藤宮さんが頼んだ素のビーフカレーの量がとても多い。上本はその2倍くらいか。牛肉もゴロゴロとあり、食べごたえがありそうだが、藤宮さんが食べきれるかどうか。

「はいチキンカレーにベーコントッピングね」

 藤宮さんの心配していると俺の注文したカレーがきた。おぉ…!。これは凄い。先述した通り鶏肉がゴロゴロとあり、ベーコンが分厚い。1cm〜2cmはありそうだ。いい焼き加減で、俺の食欲を掻き立てる。

「いただきます」

 まずは一口を。…美味い。俺が家で作るカレーとは大違いだ。何というかコクが半端じゃない。それに辛さも俺好みで丁度いい。フォークに持ち替え、ベーコンを一口。熱々で美味い。ベーコンの甘さとカレーの辛さ…ベストマッチだ。ルーとライスとベーコンと鶏肉を一度に食べよう。大きめのスプーンに溢れんばかりのカレーを一口で食べる。やばい…めちゃくちゃ美味い。量が多いと思ったがこれならあっという間に食べられる。それから俺は3分で半分ほどまで食べた頃。

「ごちそうさまでした」の声が聞こえ、振り返ると、食べ終えた藤宮さんがいた。上本も残り1/4といったところか。あの量を5分もかからず食べた藤宮さんは何者なんだ…。

 それから1分ほどで上本が食べ終え、藤宮さんが上本の分も会計を済ませ、先に帰った。また後で、と引きつった笑みを浮かべながら。

 コップに残された水を飲み干し、俺もペースを上げる。食欲のままに身を委ねた。そして…

「ごちそうさまでした。すみませんお会計お願いします」

「あいよ。700円ね」

 あのボリュームとあの美味さでこの値段。大満足だ。財布から1000円札を取り出し、会計を済ませ店を出た。スマホを取り出し時間を確認する。7時半か。家に帰ってもうちょっとだけ寝るか。満腹になった俺が家に着いてから眠りにつくのに時間はかからなかった。そして俺が起きたのが、昼を回っていてスマホの通知音で起きて藤堂先輩が怒られたのは言うまでもない。


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