チキンな友達の生徒会選挙編その2
生徒会の任期は一年間。つまり来年の九月の末までだ。解散前の夏休みにみんなでどこかに行けると思うと楽しみだ。そんで成績も生徒会に入るだけである程度は夏さんされたりするし、これ以上に上手い話はない。ということで慎司には頑張ってもらいたいと思っていたが特に大きな出来事もなく、生徒会立会演説会を迎えてしまった。
「いいか慎司俺と上本と健人の未来がかかっているんだ。三日後の投票本番までのラストチャンス。ここをモノにしてこい」
「頼む慎司!俺このままやと7割留年するって担任に言われたからほんまに頼む!」
「…命を懸けてこい」
「他力本願極めてるなー。でもやれるだけやってみるさ」
おぉー頼もしい。この大物感こそ今の生徒会長に必要なものに違いない。これは慎司で決まったな。
-「次は1年7組今川慎司君による演説です」
いよいよラストの慎司の番だ。この狭い体育館で躍動するビジョンが見える。
「えー、1年7組の今川慎司です。僕が生徒会長になったからには雪ヶ崎高校を素晴らしい学校にします。僕に清き一票をお願いします」
あれぇ、演説が短い。ほかの人は公約など2.3分ほど話していたが慎司はまさかの30秒。あの短い言葉に何が込められているというのか。そもそもほかの候補は朝から校門に立って挨拶していたり、何かしらのアピールをしてたというのにこの慎司は朝早く登校した癖にラノベを読み漁っていたらしい。こんな奴に期待した俺が馬鹿だったよ畜生。
全校生徒が922人。割合は3年生297人、2年生308人、1年生317人。2年生の票がほかの3人の候補者で別れ、1年生の票が慎司に集中。あとは3年生の票が適当に分配されれば勝てる。抱負の適当さ、ほかの候補が上級生だということ、色々考えさせられたが親近感が湧くから慎司に投票する1年生が多いだろうという発想に至るのにそう時間はかからなかった。しかし立会演説会で適当にやり過ごしたのは大ダメージだ。立会演説会が終わり、体育館から教室に戻る人の群れから「あの1年適当過ぎ」等という批判の声が聞こえてきたのだ。なーにが「どうせ立会演説会でまともに最後まで聞いてる人は少ないし真面目に長々と話すより短く適当でいい」だ。思いっきり裏目に出てんじゃねぇか。もう俺の高校生活終わったと思いながら、投票の結果が張り出される職員室前へと向かっていた。
佐久井優希
215票
藤堂月詠
455票
保科瑞樹
153票
今川慎司
67票
無効票
32
生徒会長は藤堂月詠さんに決定し、今川慎司は落選した。それと同時に俺と上本と健人の高校生活が終わったような気がした。それでも慎司とかいう負け犬はへらへらしていた。
「せめてもうちょい票取ってくれよダントツで最下位って予想通りの結果過ぎて反応に困る…」
「まぁそう落ち込むなよ俺が負けたくらいでそんなに凹むなって」
励ますのは本来俺の役目だろうが。
「俺の屍は奈良の山奥に埋めておいてくれ…」
「そんな大袈裟な。細かいこと気にしてたらそれこそ負けだぜ?」
「ここに上本と健人がいたら皆でお前をミンチになるまでリンチするところだった」
「ちょっと上手い。座布団1枚」
「イラッときた」
もう我慢できない。今すぐに殴ってやろう。
するとその時
「やぁ君が今川慎司君か。私が次期生徒会長の藤堂月詠だ。先日連絡したように2人で話がしたい。」
突然現れたその人に対し俺はあっけに取られた。
「いいですよ。んじゃあ凌哉、先に教室に戻っといてくれ」
「あ、あぁ」
そうして2人は俺の教室とは戻る正反対の道を歩いていった。




