体育祭のチキンその5
「以上で本年度の雪ヶ崎高校体育祭を閉幕とします」
校長の宣言で体育祭が終わる。今年の体育祭は圧倒的な成績でエメラルドが優勝した。エメラルドの団長が優勝チームが発表された時に興奮し過ぎて体操服を脱ぎ半裸になって先生に怒られていた。どうやら停学になるらしい。
「お疲れ。最後のアレ凄かったなー」
「うわ…慎司か焦った」
突然慎司に背後から声をかけられ思わず焦った。
「ひでぇその反応はないでしょ…」
そんなことを言われても困る。面倒な体育祭からの解放により軽めにテンションが上がっていたところに不意打ち。まともな反応なんて出来るわけが無い。
「ところで慎司はどうだったんだ?体育祭は生徒会長候補の絶好のアピールポイントだろ」
「先生の手伝いはしっかりしてきたさ」
「それだけ?」
「それだけ」
えぇー。こいつは生徒会長になる為に頑張ったことをまさか先生のお手伝いとでも言う気か。そんなアピールで大丈夫か?
「ま、大丈夫っしょ。一年生っていうハンデくらいしかないし」
「そうか。期待してる」
夏休みが明けた九月の中旬に教師と生徒による選挙が行われる。雪ヶ崎高校の生徒会は生徒会長を選挙で一人決め、その生徒会長が役職と生徒会の人数と人員をある程度自由に決められるようになっている。人数には制限があり10人までとなっている。役職は生徒会担当の先生が許可して貰える範囲で決められる。そして今回慎司が生徒会長選挙に立候補したのは理由がある。表向きは内申稼ぎで受験に有利にしたいということ。裏は中間テストで見事に赤点祭りとなった俺と上本と健人の学力を底上げしようということだ。生徒会メンバーの成績が悲惨だとほかの生徒に示しがつかないとかで雪ヶ崎高校がお金を負担し塾の講師を招いてテスト前に勉強会を実施する。それに参加して点数を稼いで成績での赤点を回避するのが目的だ。あとは合宿という名目で旅行とかにも行けるらしい。生徒会の権力がとても強い。
「おーい凌哉打ち上げ行こうぜ」
校舎の方から馬原の声が聞こえた。上本も健人も梟もいる。
「いや、上本と健人はクラスの打ち上げ行けよ。」
「「ぼっち舐めんな!」」
見事にハモった。テニスのダブルスでもペアを組んでるらしい上森ペア(命名俺)の仲は凄い。
「黒田も呼んでもいいか?」
全員が頷き、黒田を探した。この後の打ち上げでみんなに障害物競走で完全勝利したをドヤ顔で語って盛り上げよう。そう思い1年生の俺の体育祭は終わりを迎えた。




