体育祭のチキンその4
既に流石に嫌な予感しかしないが、クラスの団結力が試されるあの大縄跳びで大戦犯となった梟よりは酷いことにはならないと信じている。
「とりあえず適当に頑張ろうか」
「我が覇道に敗北はない、当然の如く栄光を手に入れるのみ…」
はえ~。
「気合い入ってんな。でももう最下位脱出は無理だし、頑張ってる感を出していこう」
「気合い?違うな。宵闇に閉ざされた英霊たちの魂が我を奮わせてくるのだ…」
スケールが壮大過ぎる。
「障害物競走に出場する生徒は入場門に集合してください」という本部からのアナウンスがかかり俺と黒田は移動した。
一周200mのトラックをデカパンを履いたまま走りその途中で障害を乗り越えるこの種目。平均台を二人で横向きに通ったり、粉の中から飴を探す名前の分からないアレもあったりする。しかし何よりこの種目で大事なのはペース配分である。先生の手抜きか、それとも意図したことなのか障害自体はトラック半周分…つまり100m地点までしか用意されていないのだ。これが何を意味しているのかというと最後は目立ちたいと考えているほかのクラスのDQN共は最初から飛ばしてラスト100mで失速するのは目にみえている。だから最後で追い上げれば勝ち目はある。クラスメイトの期待の目もあるし一応このことを黒田に伝えて改めて、その覇道(?)の為に敗北しないようにする。
「やっぱりお互いに体力ないし最初はゆっくりでラスト100mで追い上げようか」
「ゆっくり…だと?我が覇道に小細工など無粋な真似。最初から全力を注ぐのみ!」
チッ…口だけは達者だな
「おーけー。じゃあそうしようか」
あれ?この種目全然楽じゃないな。主に黒田が原因なのだが。
最初から飛ばすなら見えていた勝ち目も終盤の失速で消えるだろう、と思いながら俺はスタートラインに並んだ。




