チキンな友達のチキンなデートその6
医務室に連れて行かれる馬原に俺達は一言ずつ謝罪の言葉をかけたあと、急いで上本を追いかけた。
時刻は9時半。
正直コーヒーカップに一回乗っただけで、かなり疲れた。
そしてこの流れからだと、どうせ絶叫系だろう。藤宮さんにおとなしいアトラクションは似合わない。見た目がクールなだけの、ベリーホットガールだ。クレイジーガールだ。
そんなギャップがすごいクレイジーガールと付き合う上本もクレイジーだろう。前にエアホッケーをした時に点が入る度にデカイ声を上げて喜んでいた。
それに健人によると、テニスでも点が入る度にデカイ声を出して喜んでいるらしい。
クレイジーである。
そんなクレイジーカップルはどうやら急流滑りに乗るようだ。
開園して1時間しか経っていないのに行列ができていた。
看板によると現在20分待ちだそうだ。こんなのに行列に並んでまで乗りたい人の気が知れない。
ということで
「これってわざわざ2人で乗る必要ないよな?俺が下で見守ってる間、健人が後ろで監視しておけばいいんじゃないか?」
「素直に怖いって言えよ」
辛いな。
そのあと健人に上手く言いくるめられ、急流滑りに乗せられた。
そして上本カップルの真後ろに並んだ。
変装は完璧なのでバレる心配はない。
そうマスクさえあれば何とか「凌哉も健人も顔は悪くないんやから他人のデートを尾行するんやったら頑張って彼女作りや」
思いっきりバレていた。
誰だマスクさえあれば何とかなるとか言った奴。
「だ、黙れリア充。俺達はお前らが高校生的によくないことをしないかをだな」
「那月がうちに何かするわけがないから」
藤宮さんの冷徹な反論はどこか悲しみが込められているような気がした。
急流滑りは苦手だ。
何せかなりの勢いで水面に突っ込むため、水しぶきが上がる。
それが顔にかかるのが嫌だ。
しかし列に並びもうすぐ俺達の番なので、何を言っても無駄なのだが。
あぁまた悲鳴が聞こえた。
そういえば藤宮さんも悲鳴をあげるのだろうか。想像しにくいな。
そもそもクールな人は絶叫マシンには乗らないのだろうか。
様々な疑問が頭に浮かぶが、急流滑り乗り場が目の前に迫り緊張と恐怖が俺の中を支配していく。後少しで俺の全てを支配されるところだったが、わずかに残った俺の」
「声に出てる」
冷静な健人から突っ込まれた。
「悪い。どのあたりから声に出てたんだ?」
「クールな人は絶叫マシンに乗るとか乗らんとかあたり」
またつまらぬ癖が出てしまった。
そんなこんなで俺と健人による上本カップルのデート監視活動は次回に続く。




