チキンな友達のチキンなデートagainその8
文字数の調整に3ヶ月かかりました(大嘘)
「もしもし黒田?俺やけど」
『今度は何だ…』
もはや呆れられているな。
「この後雷雨やぞ。場所を変えよう」
『我が愛は雷雨如きに負けぬ。我が《雨やめー!》と言ったら止むのだ』
それどこの穂乃果ちゃんだよ。お前の推しは海未ちゃんじゃないか。
「俺に秘策がある。今すぐ遊園地を出てくれ」
『何故だ…我には上本の考えが読めん…』
そりゃそうだ。
「ちなみに俺の秘策では告白の成功率は100%やで」
もちろん嘘だ。ほぼ100%なのは間違いないが。
『詳しく聞かせてもらおう』
声色が変わる。口だけで本当は自信が無かったのかも知れない。
「取り敢えず遊園地の外にタクシーを呼んでおいたか。行き先も指定してあるから乗るだけでええで」
月詠先輩の奢りでな。
『御意』
これで第一段階はクリア。俺達も移動しよう。
「月詠先輩俺達も移動しましょう」
幸い荷物も多くなく移動も楽だ。
「分かった。よし行こう莉緒香」
「はーい」
やっぱり着いてくるのか。
「予約された藤堂さん?」
開けられたドアから乗車。タクシーの運転手は初老でベテランのドライバーという風貌だった。
「そうです」
「どちらまで?」
「雪ヶ崎ベースボールセンターまでお願いします」
空には雲が目立ち始める中、今回のデートは最終盤を迎える。
バッティングセンターに着くと入口に若いカップルが立っていた。男の方は全身黒で銀髪のウィッグという厨二病丸出しで、端的に言って不審者だった。そして女の方は明るいショートヘアで目立つ。
履きなれていないスカートが落ち着かないのかモジモジしていた。こんなカップルは俺の知る限りあいつらしかいないな。
「フハハハここで会ったが百年目」
「上本…」
やめろそんな目で見るな。そして何か言え。
その目にはデートを邪魔されて不機嫌なのか、何となく覇気はなかった。
「黒田には俺とストラックアウト勝負をしてもらう!」
「な、なにぃ!?…と言えばいいのか?」
今日の黒田はノリが悪いらしい。当然と言えば当然だが。
「もちろん音坂を賭けて…な」
「なん…だと…?」
流石に今回は良いリアクションだろう。
「ルールは単純や。20球を投げて九枚のパネルに多く当てた方の勝ちとする」
「立会人は私、藤堂月詠が務める」
「ただのストラックアウトに立会人など必要なのか…?」
それに関しては俺も疑問に思う。ストラックアウトに不正なんて聞いたことがない。
「ん?私は結構ボークとかに厳しいぞ?」
いつもの月詠先輩で安心した。




